お願いだ名前ちゃん!助けてくれ!そう言われた夏本番の少し前の季節。
お団子屋さんの親父さんに言われた言葉だ。

「助けるって何をしたらいいんですか?」

「とりあえずこれの味見をしてほしいんだ」

目の前にずらっと並ぶとかき氷の山、軽くみても10杯はある。上にかかるものは色々だ。

「こ、こんなにですか!?」

「かき氷なんて初めて作ったはいいものの何にするか迷っててなぁ…だから俺とカミさん以外の言葉も聞きてぇんだ!だからお願いだよ名前ちゃん!」

「いいですけど…これは…」

さすがに量が多い。多すぎる…。甘いものは好きだがかき氷は別。寒くなるのだ。暑いといえもそれはきつい…。
どうしようと考えていると「おーいこんちわー」と声が聞こえた。この声はナイスタイミング!

「銀さん!依頼をお願いしたいです!」

「依頼ィ?」

ことの経緯を話して銀さんは目を輝かせた。銀さんが言うには「ここ最近かき氷の氷すら食べられていない状況」と言われた。待って万事屋そんな経済難なの?

「じゃーいただきます!」

「どうぞ!」

私も少し食べては改善点や美味しいところなどなど考えて、銀さんも手を止め考えてる食べている様子だった。




「8番は違う甘味屋にもあったからかぶっちまうな、でも9番のはここでしか食えねぇ。だから残すなら9番だな。10番は定番だから練乳かけたやつとかけないやつがあったらいいな」

そう的確に言う銀さん、さすが糖分王。
親父さんはメモをしながら聞きたまに銀さんに質問する。それに他店と比べて話したり一般的な甘味のことを話したりしている。すごいな銀さんは…。

「ありがとう万事屋の旦那!これでまた練ってみるよ!」

「おう!また食いてえ」

「ありがとう銀さん、助かったよ」

「おうよ、糖分食えたからチャラな」

「え!いいの?」

「おう、また完成したら食いに来るわ」

「ありがとう…!」

わっしゃわっしゃ私の頭を撫でる銀さんとワイワイ話している2人。親父さんがそれを見て「銀さんが旦那さんみたいだねぇ名前ちゃん」と言われた。

「そそそそんなことないですって!ねぇ、銀さん!」

「そそそそうだよ!名前に悪いじゃねぇかよ!何言ってんだ親父ィ」

「そっくりじゃないかい」

3人で話していると女将さんが「もう上がっていいよ、銀さんのデートしてきなよ」と言ってくれた。デートなんて恥ずかしすぎるが、お言葉に甘えて仕事を先に上がらせていただいた。
そうだ、浴衣を買いに行かねばと思い出し、銀さんに「近くの浴衣が売ってるお店を教えて」と聞いたら、じゃあ一緒に行くかと言われてお言葉に甘えてお願いした。






「わぁ…!すごい!可愛いー!」

「女はそういうの好きだろ?」

「うん!これもかわいい!」

いろんな浴衣を見て可愛い白い花の髪飾りと簪、パールのついた飾り細工を手に取った。これ銀さんの白だな、と思いカゴに入れた。
それと浴衣‥どうしようかな…ピンク地のものと白地のもの…うーん…どうしようかな…。

「こっちがいいんじゃねぇの?」

後ろから銀さんが覗きながら手に持つ浴衣の白い方を指さした。

「本当?」

「おう、白いのいいよな。ピンクとか赤とかの花が書いてあってよ、名前に似合うよ」

「…じゃあ、これにするね」

銀さんの顔を見ないでレジへ向かう私。
かっこいい顔で言わないでよ!恥ずかしいしいい声だしかっこいいし背高いしもう…ドキドキする…これは違うから、推しだから好きなだけで違うから。

「違うから……」

だって銀さんはこちらの世界、私はいつか帰る場所がある私だから、絶対にダメだ。
仲良くなりすぎるのも、お互い知りすぎるのも。


-磯の鮑の片思い-
(自分が一方的に相手のことを好きなこと)





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