15 仕事上の関係
「懐かしいな、こういう時間」
「こういう時間って?」
「名前さんとふたりで何かを食べたり、話したりする時間」
10年ぶりの再会がついこの間。
そして、今日が2回目。
彰が今ふたりの間に流れるこの時間を懐かしいと感じるように、私が懐かしいと感じるのも極自然なことだった。
でも――
「この間は、」
「彰」
「…ん?」
「この間のことは……忘れる」
「……」
「だから……彰も忘れて」
彰が何を言おうとしたのかわかったから。
わかったから、わざとだよ。
彼の言葉を遮り、先に言いたいことを言ったのは私。
「私も久しぶりに会えて嬉しかったのは本音。でも、それ以上でもそれ以下でもないの」
「……」
「彰と私は、仕事の関係。だから、仕事がやりにくくなるような言動や行動は……やめて」
『会いたかった』?
――私もだよ。
『俺を見て』?
――見てたよ。
ずっと。
ずっと。
でも、裏切ったのは……彰。
ほかの女の人とキスしたのも……彰。
「彰」
「…ん?」
「もう、あの頃には戻れないんだよ」
もう絶対、戻れない。
戻れるはずがないんだよ。
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