SURELY


※現パロ、同棲


俺たちが住む部屋には大きな出窓があって、そのすぐそばにセミダブルのベッドが置いてある。今日は、梅雨が明けて天気がよかったから、シーツを洗濯してひだまりのにおいをたくさん吸い込ませた。ひざを抱えてシーツに身を預けるなまえが、夏になるとよくするポニーテール。長い髪を、あけられた出窓からそよぐやさしい風がさらっていくのを、ぼんやりと眺める。

おだやかな空気がなんだか俺にはねむたくて、あくびをひとつ噛み殺した。


夏の夕方の空気。生ぬるくて、どこかしっとりとしていて、決して心地よいとはいえないのかもしれないけど、俺はこうして風を浴びながら、なまえと過ごす時間が好きだ。


「ねえ善逸、どっかから晩ごはんのにおいしてきたよ」
「…ん、ほんとだ、もうそんな時間?」
「バターのにおい!いいにおい〜お腹すいてきちゃったね」


俺の足の間に座ったなまえは、そうして俺に小さな背中を預けてくる。窓の外に見える薄明光線が、やわらかくなまえのうなじに光を落として、俺はそれに見惚れてしまった。


「晩ごはんどうしよっかあ」


なまえの問いかけには答えずに、きらきら光るうなじにうしろから吸いついた。「ちょっと!」とほんのり棘のある言葉とともに、頬を赤らめながら振り返ったなまえの唇にも、音を立てて吸いついて。しばらくやわっこいそこを堪能してから、ぎゅう、となまえの腰にまわしていた手に力を込める。

時折、素直な気持ちに突き動かされて、突然こんなことをする俺を、なまえはいつも無邪気に大げさに笑う。その声は雲を突き抜けてどこまでも遠く飛んで、俺をどこかへ運んでいってくれるようで。

それが俺はすごく好きで、このまま時間がとまればいいと、ふと寂しくなってしまったんだ。


「なに食べたい?」
「んん? ……ぜんいつ、もうちょっとこうしてたいんでしょ」
「…あ、ばれた?」


なぜだか涙が滲んできて、視界がぼやける。なまえが俺の腕のなかにいることも、こんなにおだやかでやさしい夕涼みの時をともにできることも、ぜんぶ奇跡なんだって思うから。


どこかの家に掲げられているのであろう風鈴が、ちりん、と揺れて俺の鼓膜をたたく。軽やかで迷いのないそれは、まるでなまえの音のようだ。揺るがない心があれば、きっとどこまでもいけるはず。


「もう少しゆっくりしたら、一緒に買い出し行こっか」


振り向いて、俺の頬にキスをひとつ落として、おおきな双眸を細めて笑うなまえ。
俺がなぜだか泣いていても、なにも言わずにやさしく涙をぬぐってくれるなまえ。



俺は、恥ずかしいほどきみを愛しているよ。



(BASE SONG/TITLE : never young beach「SURELY」)



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