「
みんなのうたうたい」
シャッキシャキの転校生
幼馴染
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おかしい。
いつも煩く纏わりついてくる日向が大人しい。
面白みのないセーブ画面で、ふと我に返った。
ゲームに熱中してたから怒ってんのかな、と恐る恐る振り返る。
「……何見てんの?」
ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべた日向に声をかけると、本に落としていた視線を俺に向けた。
てか、でかい本だな。
あんなん、俺の部屋にあったっけ?
「卒アル」
「あ?」
「小学校の」
「……ああ」
本棚の隅に置きっぱなしにしてあった気がする。
何でそんなもん見てんだ?
「懐かしいよなあ〜。お前はあんま変わんねえからつまんねえけど」
「お前は、変わりすぎだろ」
「まー、なー。お前、俺のこと女だと思ってたもんなー」
「っ!!!」
マジか!
勘違いしてたの知ってたのかよ!
確かに、小3の春に越してきた日向を、暫く女だと思い込んでいた。
足は早いし、馴れ馴れしいし、変な女だって、超意識してた。
「気づくまでに結構時間かかったよな?」
……おうよ。
体育がプールになってだな、気づいたの。
甘酸っぱいはずの初恋。
砂糖と塩を入れ間違えていたのに気づいた瞬間だ、よく覚えている。
4ヶ月間の塩辛い記憶。
「お前がリボンなんてしてるから」
「リボン……? んなのしてたか?」
「してたろ」
うーんと唸る日向に近寄って、アルバムを覗き込む。
「……あった、ホレ」
「あー……。服は母さんの趣味だろ」
襟元にリボンがついた可愛らしい洋服を着て微笑む小学生の日向。
白くてふっくらした頬に、少し吊り気味の大きな目、つんと尖ったピンクの唇。
今見たって、美少女にしか見えない。
まあ、着せたくなるわな。
お前の母ちゃんの気持ちが分からんでもない。
「可愛かったよなぁ」
差し出されたもやしのような手。
高い声。
懐かしい。
「……なにそれ」
横から聞こえた日向の声に笑いが漏れる。
「なにジェラってんだよ。自分じゃん」
「ばっか! しらね」
「あはは、可愛いじゃん。今のお前のが、可愛いって」
「……しらね」
ふいっと横を向いてしまった日向の顔を覗き込む。
今じゃ女の子に間違えようもなく、男らしく成長した日向。
でもさ、でもさ
そんなお前が好きなんだよね。