「
奏でて?」
09
そっと首を巡らせると、肩に擦りつけられていた洋二の額が持ち上がった。
至近距離で目が合う。
「ほら。好き、だろ?」
色気を含んだ眼光に秀和の頬が一気に真っ赤に染まった。
何も言えず、ただ、カクカクと首を縦に振る。
「好き?」
重ねて聞く洋二に、何度も首肯する。
ここで何か誤解される訳にはいかないと、首がもげそうになるくらいに振った。
秀和のその様子に満足した様子で、洋二がニカっと白い歯を見せた。
「んじゃ、ヒデさんは今から、俺の恋人ね?」
秀和の向きを変えて、正面から抱きしめ直した洋二が楽しそうな声を上げる。
展開の速さに頭が付いていかない秀和だったが、「コイビト」の言葉に、じんわりと心の中が暖かくなっていく。
嬉しすぎて、信じられない。
出来すぎだろう。
こんな上手い話……まさかドッキリか何かじゃないよな?
「……っくしょん!」
盛大なくしゃみが出た。
先程から、ずっと丸出しの下半身が冷え切っている。
火照っていた体も落ち着いてしまい、寒さが這い上がってきていた。
「あ、そっか……」
おかしそうな洋二の声が頭上から降って来た。
暖かい腕の中から解放されて、余計に寒く感じる。
ぶるりと身を震わせて見上げると、スラックスを持ち上げかけていた洋二が動きを止めてにやりと人の悪そうな笑いを口元に浮かべた。
「さっきの続きして温まる?」
「…………!!」
囁くような洋二の誘いに本体の代わりに息子がひくりと頷いて、秀和の顔が羞恥に染まる。
続きとはどこまでなんだろう……。
期待で欲情に火がともるが、はたと気づいて、首を横に振った。
「でも! 人が来ちゃうから!」
「ああ。あれ。嘘。今日は店休むらしいから兄貴は来ない」
「え、ええええええ?」
「来なきゃOKなんだ?」
「ちが……んあっ!」
拘束されたままの腕の皮膚を軽く噛まれて、肩が揺れた。
「これ、このままでイイ? なんか可愛い」
「ちょ……よ、じくん……っふああん……」
ゆるゆるとペニスを扱かれて心地よさに気持ちが緩んで行く。
「あっ、あああぁぁん……ンあ……」
このまま流されちゃおうか……。
すっかり幸せの甘さの虜になっていた秀和が現実に引き戻されるのは、知識のない洋二にイキナリ突っ込まれそうになる数分後の事。
「無理! 無理だから!」
「…………」
「洋二君、ステイ!」
「……わん……」
……先が思いやられる秀和だった。