「
痛い」
へそ
蟲(人化)×青年
孕み
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痛い。
へそが痛い。
夏用の衣は目が粗く、ちくちくと刺激を与える。
普段ならば窪んでいるへその皮膚は弱いらしく、気になって仕方ない。
服の上からぽこりと膨らんでいるへそをぷにぷにと触る。
変な感じだ。
いや、もっと変な所は他にあるんだけど。
「つつがないか」
部屋の入り口に吊り下げられていた幕を潜って、長身の男が姿を現した。
背中まで伸びた黒く艶やかな髪。
スラリとした褐色の体。
理知的な風貌は都でも滅多に見られないほどの上玉だ。
「ひっ」
そっと手を伸ばされて、ボクはびくりと息を呑んだ。
条件反射だ。
途端に悲しそうな顔をする男に若干心は痛むが、フラッシュバックのように頭に浮かぶ男の本性に脂汗が滲む。
心と生理的な嫌悪感は別物らしい。
真っ黒で巨大な蟲。
それがこの美丈夫の正体だ。
商いを生業とするボクは、旅をすることも多い。
周囲が止めるのも聞かずに踏み入ったある峠でこの蟲に襲われた。
食われる。
大きな怪物にのしかかられて、ボクはそう思った。
……確かに食われた。
意味は大分違うが。
ボクの大きく膨らんだ腹の中には、この蟲の卵が収まっている。
「……ぁッ」
ぼこりと腹の中の卵が振動した。
そっと男を伺うと、それ気づいたらしく、口角が僅かに上がる。
たったそれだけで壮絶な色香が男の顔に滲んで、ボクの心臓がドクドクと騒ぎ出した。
「ン……ゃあ……」
嫌だ。
嫌なのに、体の芯がじくじくと疼く。
父親の気配を感じ取った腹の中の卵が悪さを始めたのだ。
「餌を欲しがっている」
諭すように声を掛けてくる男の目は細められ、震えだしたボクを粘度を感じさせる視線が包む。
いやいやと首を振るボクの腰を、今度は躊躇いなく男の腕が抱き寄せた。
「ヒっ……、あぁああ……」
男と触れ合う皮膚が爛れた様に熱い。
嫌悪からか、快感からか、涙が眦から零れた。
それを、男の赤い舌が舐め取る。
「ゃ」
「優しくしよう、いつものように」
肌蹴けた着物の隙間に手を差し入れて、後唇を弄る男から逃れる術をボクは持たない。
また今日も、ボクはズクズクとした快感に支配される。
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初めての時は蟲の形状のまま犯されています。
かなりのトラウマ。
普段、甲斐甲斐しく世話をしてくれる男になんとなく絆されつつも、その時の恐怖やら嫌悪やらは拭い去れません。
卵の存在を拒絶していないのは、きっとそういう分泌物があるのでしょう(ご都合)。
餌はベタに父親の精液です。
卵は複数。
生む時も快感が伴ったりすんじゃないかと思います。