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「久遠、もっとさ…やる気を出そうよ。趣味はないの!!?」
ある日、せりがオレに言った。
オレはじとりとした目を返す。
「趣味は読書と言ったら信じなかったのは君だ、せり」
「えええ!!? あれ、定番過ぎる冗談でしょ!!?」
どうして驚くせり。
君は13年前、オレの部屋に遊びに来て、書棚に並べられた本を見ていたじゃないか。
勉学の基礎、術の知識はレグに教えて貰っていたけれど、更なる深みを得たのは各務の書庫からが多い。
レグも、俺の中のなけなしの"やる気"を振るい立たせるやり方にて、少しでも探究心と向上心、そして持続心を煽るやり方を画策していたんだろう。
書物はマイペースで知識を蓄えられるから。
知識が増えるのは、中々に気分がいいもの。
それに刹那を護るのに役立つかもしれないと思えば、読まないわけにはいかない。
どれだけ知識を蓄積したのかの目安として、読破した書物は部屋に置いていたんだ。
語学は、大体のものならマスターしたし、原書も沢山読んだ。
13年前。
せりは、年齢が幼いということもあったけれど、今よりも数段馬鹿だった。
そのせりといつも喧嘩しているオレもまた、せりから馬鹿だと思われていた。
だけど刹那に対しては例外。
刹那を王子様のように、全ての要素にて敬っている。
刹那は理解力はあるが、積極的な知識欲がない。
刹那の知識の出所は専らオレで。
オレの知識で成り立つ刹那を、せりは"頭がいい"と言うのなら。
オレだって面白くないだろう?
だからこそ、せりの中の"オレ像"払拭の為に、部屋に招きいれた。
オレの領域に初めて呼んだあの時、ドキドキしていたなんて君は知らないだろうけれど。
――うわあ、凄い久遠。こんな難しい本読めるなんて久遠って凄いね〜。
そう言われることを、期待していたのに。
――漫画がないから、久遠の部屋嫌い!!!
せりがオレの部屋に居たのは僅か数秒。
せりは馬鹿すぎて、オレの思惑は通じなかった。
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