本当に周囲は、オレのことを理解していないと思う。
オレを性格の悪い珍獣のように思っているに違いない。
オレの性格は、後天的だ。
特殊なお家事情で歪みまくった。
弟の為に強くならないといけないと、とにかく弟に向けられる視線を弾く為、オレが目立たねばならないと。
弟の本名"久遠"を名乗って…傲慢に強気に振舞っていたんだ。
オレは本来温和な性格で、読書が好きな平和主義者だ。
完全インドア派で、物静かなんだ。
そう、あの仏頂面に言ったら即座に鼻でせせら笑われたし、
俺の昔を知るせりに言ったら、
――久遠。それは弟の刹那でしょう?
せりにも笑われた。
大爆笑だ。
身を捩ってひーひー泣いていた。
せり。
君が一目惚れをした"優しい"、"天使"のような刹那は、刹那になりすましたオレなんだ。
あの時だけ、オレは…素に戻ったんだ。
だけどそれはいえなくて。
失望させたくないという恐れがあると同時に、刹那と"同化"している今、主張しても結局は同じことで意味がないと。
そう無理やり自分自身を宥(なだ)めながらも、オレは思っている。
弟のように愛されたいと思っていた昔、今は違った形でそれは叶ってはいるけれど、完全に同化しきれぬ"オレ"の心が、もっとオレを…昔からのオレを、せりに浮き彫りにされたいと望んでいる。
刹那の心を知りながらも、久遠の心が大きいんだ。
せりから"永遠"に愛されるには、刹那で居たい。
だけど、喧嘩ばかりしてせりの気を引こうとしていた、久遠の心も判って貰いたい。
同化を望みながら分離を望む。
分離を望みながら同化を望む。
ああ、なんて矛盾。
これもせりに再会し、密やかに愛するが故のこと。
オレは久遠であり刹那である。
オレは刹那であり久遠である。
共にせりを求めながら、自分だけを見てもらいたいという心に喘ぐ。
だからあまりせりに深入りしたくないのに、深入りしたくて仕方がない。
どこまでも矛盾。
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