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「くまのような男?」


桜も会話に参入し、目を細める。



「遠坂が言うには、くまはあたたかくて包容力があって、女ウケするらしい。

で、芹霞は一目惚れしたんだろうって」




「「「は!!?」」」



俺と玲、桜までもが目を見開いて煌を見た。


「一目惚れって何だよ!!? 僕、ちょっと由香ちゃんに電話して訊いてみる」


"約束の地(カナン)"から戻った後、遠坂は一旦…居候していた俺の家から出て家に帰った。

何でも兄である榊が此処にいることを好まないらしい。

携帯電話を取りだした玲だったが、やがて舌打ちして携帯を折り畳む。


「駄目だ、電源が入ってないって。メール出しておこう」


かなり苛々しているらしく、時折溜息をついて画面を睨み付けている。

玲が機械関係で、手こずったり操作を誤るということはまずありえない。

それだけ、動揺しているのだろう。


「煌、思い当たるフシはないのか!?」


俺の問いに、煌は顰めっ面でうんうん唸って考えていたが、



「一昨日…新規オープンした骨董品店で芹霞とデートした時…」

「デート!!!? 僕とは邪魔しておいて!!?」

「い、いや言葉を間違えた。芹霞に付き合わされて…」



煌の中でのデート。

デートはデート。

2人の外出は、過去多々あるから。


平静でいろ。

それくらい、許容しろ。


俺は気づかれないよう、深呼吸をしていて。


「西洋骨董店なんだけれど、芹霞がじっと見てた店主がいたんだ。熱い目で」

「!!?」


俺の深呼吸は途端に乱れて、煌を見れば、


「か、櫂!!! お、俺を目で殺そうとするなって。芹霞がふらふらと店主と話し始めたから、俺…芹霞引き摺ってすぐその店から出たんだけど。何話していたかは記憶にねえ」

「……それ以来、なのか?」


煌は、橙色の髪をがしがし掻きながら、面白くなさそうに頷いた。


「俺には、"あれ"しか思い当たらねえ。その店主…お前らみたいな凄い美形ってわけじゃなくて…今思えば、人懐っこい顔した"くま"の感じはあったんだ」


俺は決めた。


「明日の予定は全てキャンセル。煌、明日その店に俺を連れて行け!!!」


他の男に心を奪われたなんて、そんなの俺は許さない。

見定めてやる。

その"くま"みたいな男を。


芹霞――

俺をみくびるなよ。


俺はお前を渡さない。


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