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*****櫂Side


高校がまだ秋休みの最中。

その頃の俺は、紫堂の野暮用で外出が多かった。


玲との"おでかけ"を何故か切望する芹霞を憂い、護衛役の煌を芹霞に貼り付かせて、俺は桜を供にし…そして家に帰るなり、煌が暗い顔をしてぼやいたのだ。


「なあ……芹霞が変なんだよ」


……と。


「変って?」


玲が俺に熱い珈琲を差し出しながら、首を傾げた。


「何だよー、深く考え込んで溜息ばっかりでさ。声かけても上の空。家帰っても飯残すし。あの芹霞が、だぞ? 連日の勉強のしすぎでおかしくなっちまったかな」


「……煌。男の影、ないだろうね!?」


突如玲が声を荒げて、目を細めた。


恋の病。


俺も玲と同じ疑念に至って煌を見れば、余程俺達の顔が荒んでいたのか、その顔色は若干青く。


「せ、芹霞の様子見る限りでは、俺達がどうのじゃねえし…俺も家に遊びに来てた宮原や遠坂を裏で問い詰めたんだよ」

「で?」


俺は苛々しながら続きを促した。


学校が休みの今、忙しい俺は芹霞と別行動が多くて。

芹霞の不可解な態度を紐解けるのは、俺の居ない間に傍にいた奴らであるのは間違いなく。



「くま、だってよ」

「くま?」


玲がますます目を細めた。


「好みのタイプがみつかって、それがくまらしいんだよ」


俺もますます目を細めた。



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