18後悔という名の過ち
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─今から10分程前─
今日も特に問題はなさそうだな…と、テンゾウはそう思いながらいつものように名前の護衛の為店の屋根上で待機をしていた。
「しかし…本当に先輩が言う通りあの大蛇丸に狙われているのだろうか…」
カカシ先輩からその話を聞いてから1ヶ月。
特にこれといった問題もなく、彼女は日々を送っている。それに前に一度接触した時にも思ったが、本当に彼女は何の変哲もない"一般女性"だ。
そんな彼女を、果たして大蛇丸が狙うだろうか?
そう疑問に思うも、まぁ先輩の言う事だから可能性がある限りは用心するに越したことはないかと、再度護衛の為辺りを警戒していた時だった。
「……テンゾウさん、お話が。」
スッとテンゾウの横に姿を現した1人の暗部。
「……その面、カガリか。何の用だい?」
「三代目火影様が、至急来て欲しいとの事。」
「三代目が……?」
同僚の忍、カガリの言葉に疑問を抱く。
三代目は名前の護衛についていることを知っているはず…それなのに何故今呼び出しがかかる?
しかしその疑問は、次に発せられた言葉でかき消されてしまった。
「……今護衛している女性の件で早急に伝えたい事があるとの事でした。とても大事な話なので直接言いたいと。」
「……なんだって?」
「ここは一旦、俺が受け持ちます。ですのでテンゾウさんは火影様のところへ。」
「…あぁ、わかった。すぐ戻るから、それまでの間頼むよ。」
彼女の件で早急に話したいという事は、何か重要な事が判明したという事なのでは…そう思い同僚にその場を任せテンゾウは足早に火影邸へと向かった。
しかし三代目の元へ向かう最中、妙な胸騒ぎを覚え足を止める。
―――何かが、おかしいと。
そもそも彼女が護衛対象者だと、何故カガリは知っていたのだ?三代目とカカシの話によれば、彼女が異世界から来たと言う話は協力者以外には知らされていないはず。
だから護衛している事実さえ、本来は"極秘"とされている。
そして自分に話があるのなら、他者ではなく
伝令鷹を寄越せばいいだけだ―――……
「――…っ!!くそ……っ!!」
テンゾウは自身の失態に気付き、元来た道を急いで引き返す。間に合ってくれという思い一心で。
……場面は変わり、店内の控室。
そこで名前の身体を抱きかかえ、床に仰向けにし寝かせる一人の男。
「…ふぅ、随分探しましたよ…名前さん。」
眠る名前にそう呼びかけ、ニヤリと笑みを溢す。
まぁ探したとはいえ同じ特徴の女を連れ去っただけでこうも護衛が厳しくなるんじゃ…ここに居ると言っているようなものだなと、自身の作戦にまんまとハマった木ノ葉を嘲笑った。
「…さて、時間もない事だしさっさと終わらせようか。」
男はそう呟くと、ポケットから赤い液体の入った小瓶を取り出した。そして蓋を開け、彼女の喉元にソレを垂らす。
白い首元がその液体で赤くなると同時に、ジワリと黒い模様が浮き出てきた。
「…術者の血があって初めて浮き出る封印式か…これは誰にも悟られないな。あのお方もよくやるよ、まったく…」
言いながら男は印を組み、彼女の喉元に手をかざす。
「解魂法印!!」
術を発動させかざしていた手を退けると、首元に浮き上がっていた模様が徐々に薄れ、やがて跡形もなく消えた。
「さぁ…これでアナタは"本来の姿"に戻りましたよ。本当はこのまま連れ去りたいけど、今は明日のことで手一杯でして。…それにそれは僕の役目ではないしね。またお会いできるのを楽しみにしています。」
眠る名前の喉に触れ、意味深な言葉を呟く男はこの場から去ろうと立ち上がる。
「さて、じゃあボクはこれで―――…あぁ、なんだもう帰ってきちゃったんですか?」
しかし次の瞬間、背後から凄まじい殺気を感じ振り向いた。そこにはこの場を離れさせた暗部…テンゾウの姿。
「貴様……っ!彼女に何をした!?」
刀を抜き殺気を放ちながら間合いを取るテンゾウに、男はまるで何でもないかのように話を続ける。
「……さぁ、何でしょうね?まぁそんなに殺気立たないで下さいよ…。ボクはもうこれで帰るつもりですし。」
「行かせるわけがないだろう……!お前…中忍試験を辞退したカブトだな…?やはり大蛇丸と繋がっていたのか!?」
「…アナタもカカシさんと同じことを言うんですね。…でも良いんですか?こんな悠長に話をしていて。彼女、死ぬかもしれませんよ?」
そう言って名前の姿が見やすいよう男は自身の体を退けると、テンゾウは首から滴る赤い血を見て目を見開いた。
「…っ名前さ「クク…では、またお会いしましょう。」
その隙をつき、男は役目を終えた為その場を後にした。
―――明日、彼女の力を見れる事を想像し笑みを浮かべながら。