16心に想う人

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(……う〜ん、どうしよう。)


仕事を終えお店を出たら、何やら男性に囲まれてしまった。彼らは「彼氏はいるの?」「今度食事でもどう?」等、矢継ぎ早に言葉を発して私に発言権を中々与えてくれない。


『えっと…私、人を待たせてるので「名前」


何とか言葉を発しこの場を去ろうとした時、男性の向こう側から私の名を呼ぶ声が聞こえた。
それは、私のよく知る声。


『カカシさ―――』


嬉しさに彼の元へ駆け寄ろうとしたが、すぐにその足を止める。


―――彼の"気"が、"怒り"と"憎悪"で溢れていた。


(…っ、これは…私に向けての感情…?)

それはわからないが、その纏っているものが今まで見たことがないくらい黒く重かった為カカシさんに近付くのを躊躇してしまった。
しかし彼の方から私に近付いてきて、


「…名前、行くよ。」


そう言うと、グイッと私の肩を乱暴に抱き男性達には目もくれず歩き出す。
残された男性達はカカシさんに気圧されその場からまったく動けなくなっていた。


そのままカカシさんに連れられてアンコさん達の側に行くと笑顔で迎えられ、少しだけ安堵の気持ちが溢れる。


「名前!アンタの歌最っ高だったわよ!」

「本当に、とても綺麗な歌声だったわ。聞いた事のない言葉だったけれど、それがまた神聖な感じで聴き入ってしまったもの。」

『ありがとうございます。本当は私の作った曲を歌いたかったんですけど、あの場だとあまり合わないので私の世界の歌を歌ってみたんです。喜んで頂けてよかったです!』


アンコさんや紅さんに笑顔でお礼を伝えると、隣にいたアスマさんとガイさんも言葉を発して。


「名前の声は聴くものを魅了する力があるな。また今度聴きにくるよ。」

「名前さん!!俺も感動しました!!やはり貴女は最高です!!よ、よろしければ今度俺と「ガイ、俺らもう帰るから。」


その時、カカシさんがガイさんの言葉を遮り、私の肩を抱いていた手に少しだけ力が込められた。


「おい、カカシ!俺はまだ名前さんに伝えたい事が山程「そんなの今じゃなくてもいーでしょ。」


「俺、明日から暫く家を空けるし早く帰りたいんだよ。」


その言葉に驚いて、隣にいるカカシさんを見上げた。

『え?でも本戦まで暫く落ち着くって仰ってませんでしたか?』

「状況が変わったんだ。詳しくは帰ってから話す。…じゃあ、俺ら帰るから。ああ、あと紅、明日名前を迎えにきてくれ。」

『紅さん?迎えにってどういう…ひゃっ!』


掴まれていた肩を思い切り引き寄せられ、彼の胸の中に収まる。


『ちょっ…カカシさん何し「名前、舌噛むから口閉じて。」


私の声を遮る彼を見上げると印を組んでいた。それを見て、これは度々経験してきた"瞬身の術"だと理解し急いで目と口を閉じる。

次の瞬間何かに引っ張られる感覚に陥り、私はガイさん達にお礼と別れの言葉を言うこともできずその場を後にした。


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