14忍び寄る影

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***


「……カカシ、あなた自分の顔鏡で見てみたら?」

「……どういう意味だよ、紅。」

「さっきから頬が緩みっぱなしで気持ち悪いったらない。」

「………気持ち悪いはないでしょ。」


ここは上忍待機所。
中忍試験が始まって数時間が経つ。
今俺たち担当上忍はこの場で待機をし、それぞれの時間を過ごしていた。


「大方名前と何かあったんでしょうけど。
まったく…緊張感のかけらもないわね。」

「俺、お前にこないだ"気引き締めろ"って言ったばかりだよな?」


呆れた表情で俺を見ながら紅が発した言葉に続き、アスマまで苦言を漏らして。


「…なんで2人にそんな責められてんの?俺。」

「「名前に同情してんだよ(のよ)。」」


…まったくもって失礼な奴らだ。

2人の言葉を無視し、再度今朝のやりとりを思い出す。

我慢しないと言ったあの日から、自分でも驚くほど気持ちが吹っ切れた。
名前が彼を想う気持ちはわかっている。それでも俺が名前を想う気持ちも少しずつでもいいから知ってもらいたかった。


(…口布越しのキスは…大丈夫って事だよな。)


今朝勢いでしてしまったキスを名前は拒まなかった。という事は彼女もそれなりに、俺を意識してくれているということ。

それが何より嬉しくて、更に彼女に触れたくなる。


(…ま、コレ外してのキスは俺がヤバいからしないけど。)


直接キスを交わす時は、名前がきちんと俺の事を"好きだ"と認識した時だ。


その時が来たら――――………


また頬が緩んでいたのか、アスマと紅が呆れた表情でこちらを見ていた。
なんとなく居心地が悪くなり、緩んでいた頬を引き締め2人に話を振る。


「…コホン。あ〜そういえば、この第二試験が終わる日に名前が初めて働くらしいから、アスマや紅にもぜひ店に来て欲しいって言われてたんだったな。お前ら、行けるか?」


その話を聞いた紅が先程の表情を一変させ笑顔を見せた。


「あら、そうなの?名前の歌声が聴けるなら行くに決まってるじゃない!この試験の後の楽しみができて嬉しいわ。」

その紅の言葉に続き、アスマも「俺も行くぞ」と同意を示す。


「…お前らも大概名前の事好きだね。まだ2回しか会ってないのに。」


そう不思議に思い問いかけると、2人は顔を見合わせてこう答えた。


「そうね、まだ2回しか会ってないわ。でも…あの子と話していると、なんだか落ち着くのよね。何故かはわからないのだけど…」

「それは俺も思ってた。なんだろうな…名前の纏ってる空気感とか…ああ、あと声だな。あの声は聞いてて落ち着く。」


……なんだ、この微妙にイラつく感じ。

そんな思いが顔に出ていたのか、紅が笑みを浮かべて。

「男の嫉妬は醜いわよ?カカシ。」

しかも私たち相手になんて、と楽しそうに言った。

「…うるさいよ。まぁでも、確かに名前の声は聞いてて落ち着くのはわかる。あいつの歌にも癒されたし。…ま!2人とも楽しみにしてなよ。」


そう2人に言葉をかけ、自身も5日後名前の歌声が聴けるのを楽しみにする。
そしてこの試験が無事に終わるようにと願った。


…俺のその願いは、叶う事はなかったけれど。

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