14忍び寄る影
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『カ、カカシさん…っ早くしないと遅れちゃいますよ!?今日はナルト君たちの大事な試験の日じゃないんですか!?いい加減離してください!!』
「ん〜…当分会えないだろうから、もう少し充電させて。」
いつものようにカカシさんを見送ろうと玄関先まで来ていたのだけど…今、私は何故か抱き締められている。
「もう我慢しない」と彼が公言してから数日、カカシさんはこうして私を抱き締めることが増えた。
私が嫌がる事はしないと言っていたのであれからキスをされる事はなくなったけれど、抱き締められるのは私も強く抵抗しない為そのままズルズルと今の状況に収まっている。
「あ〜…名前の匂いって落ち着く。…ね、今度一緒のベッドで寝『寝ません!!!』
顔に一気に熱が集まるのを感じつつ、彼の言葉を遮る。
(…っ本当に、なんでこんな風になっちゃったの!?)
「ざ〜んねん。」と気の抜けた声を出すカカシさん。その腕は未だ私を捉えて離さない。
と、私を抱きしめる彼の右手が私の髪を優しく梳き、露わになった耳に顔を寄せ低い声で呟いた。
「……ねぇ、今俺の心の"コエ"聴いてみて?」
『なっ…何でそんな「いいから、ほら。」
心の"コエ"を聴けなんてどういうことなんだ…と疑問に思いつつも、その"コエ"に耳をすます。
すると―――――
―――「好きだよ、名前」―――
頭に響いた、甘く掠れた"コエ"。
『………っなに言ってるんですか!!』
「いや、直接口で言うより名前に伝わるかと思って。」
悪びれることもなく、そう言うカカシさん。
確かに頭に直接響く分、耳で聞くより意識しちゃうけど……
『…って、もう!!本当に、私で遊ばないでください!!』
ジタバタとカカシさんの腕から逃れようと暴れる。
「別に遊んでるわけじゃないんだけど。…名前にはまだ俺の気持ちが伝わってないって事か…なるほど。」
そう呟くと、今度は私の顎を掴み上向きにされ、カカシさんと視線が交わる。
『…っカカシさ「名前…キス、していい?」
『なっ、なに言っ「嫌なら本気で抵抗して。」
目を見開いて硬直していると彼が徐々に近づいてきて、恥ずかしさに目をぎゅっと瞑った。
─────次の瞬間、唇に降ってきた温かな感触。
「……これで俺の気持ち、伝わった?」
唇を離し、漸く身体も解放され自由になる。
鼓動の音が早まる中彼を見上げると、いつもと変わらない表情でこちらを見ていて。
(……っ私ばっかり心乱されてバカみたい!)
『……カカシさんって、キスする時もマスクつけたままなんですね。』
その余裕な表情が悔しくて、つい悪態をついてしまった。…そう言ったのが、間違いだった。
カカシさんは私の言葉を聞くとニヤリと笑い、再度私に顔を寄せてきて。
「え?何名前…コレ外してキスして欲しいの?」
『ちっ…違います!なんでそうなるんですか!!』
「ん〜…そんな要望されちゃ、期待に答えないわけにはいかないな。」
私の否定の言葉などまるで聞こえていないかのように、再度キスをしようと私の後頭部を引き寄せ顔を近づけて来た。
もう片方の手で、口布に手をかけながら。
キスされる、と思い目を瞑る。
…しかし、唇に予想していた感触は降りてこなくて、変わりに耳元で囁くようにカカシさんが言葉を発した。
「…コレ外してキスすると止まんなくなるから、やめとくよ。」
そう言って私から離れると、何事もなかったかのように「じゃあ、行ってくる。」と家を出て行ってしまった。
閉まる扉を見つめながらその場にへたり込み、顔に集まる熱と鼓動の早さを落ち着けるのに暫くその場から動けなかった。