いつか君に伝えよう─番外編─

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「名前姉ちゃん!!ちょっと協力して欲しいってばよ!!」


ナルトくん達と初めて会った日から、私は度々ナルトくんとサスケくんにごはんのおかずを作って届けている。
カカシさん曰く、あまり野菜を好んで食べないナルトくんにはきちんと栄養がある物を食べてほしいとの事だったので、今日もその野菜中心としたおかずをナルトくんに届けにきていた。


『え…協力?何を?』


顔を合わせて早々そんな事を言われ驚いていると、私が持ってきていたおかずを絶望の表情で見ていたナルトくんがハッと我に返った。


「…っは!野菜にショック受けてる場合じゃねぇんだってばよ!!今から俺達でSランク任務に挑戦するんだけど、それに名前姉ちゃんも参加して欲しいんだ!」

『え!?ま、待ってSランクってすごい危ない任務なんじゃ…!』

「題して!!カカシ先生の素顔を暴こう作戦だってばよ!!」


………なんだ、そんなことか。
予想していたものと違ってホッと息をつく。


『…別に協力するのは構わないけど、私は一体何をすればいいの?』

「マジで!?よっしゃぁ!!名前姉ちゃんが居れば百人力だってばよ!!じゃあ今から集合する予定だから俺と一緒に来てくれ!」


言うが否や私の手を引っ張り、そのままその集合場所へと向かい出した。





目的の場所にたどり着くと、そこには既にサスケくんとサクラちゃん、そしてもう1人見知らぬ男性が待っていた。


「おっそいじゃないナルト……って名前さん!?」


驚きの表情でこちらを見るサクラちゃん。その横にいるサスケくんも「なんでアンタが来るんだ」という顔をしている。


「へっへーん!強力な助っ人連れて来たってばよ!!
きっと名前姉ちゃんなら、あのカカシ先生も弱いはずだ!!」

「ナルト、あんた今日冴えてるじゃない!!」


ナルトくんの言葉に称賛の声を上げたサクラちゃんを見ていた時、ふと視線を感じそちらに目を向ける。
そこにはサクラちゃん達と一緒にいた男性が目を見開いて私を見つめていた。


(……あれ?この人の"気"……似てる気がする。)


お互い無言で見つめ合っていたら、ナルトくんに「スケアの兄ちゃんと名前姉ちゃん、何見つめ合ってんだ?」と問われ、その言葉にはっと我に返り慌てて男性に頭を下げる。


『あっ……す、すみません!ちょっと知り合いに似ているなぁと思って…あの苗字名前と申します。よろしくお願いします。』

「あぁ…いえ、こちらもすみません。…綺麗な方だなぁと思わず見惚れてしまいました。写真家のスケアと言います。よろしく。」


自然に容姿を褒められ、顔が熱くなるのを感じる。


(この人…ちょっと苦手かも。)


普段、こんな風に誰かに褒められた事がないのでどう反応していいか困ってしまう。


「名前さんは、カカシさんとはどういったご関係なんですか?」

『遠い親戚で…カカシさんのお宅にお世話になっているんです。』

「へぇ…じゃあ、カカシさんの素顔も見た事があるんですね?」

『えっと……はい。一度だけ、ですけど。』

「「一度だけ!?」」


私のその言葉に、サクラちゃんとナルトくんが即座に反応した。


「え、待って名前さん…名前さんがカカシ先生と一緒に住んでから結構経ってますよね!?なのに、一度だけ!?」


私の言葉に驚きを隠せないのか、サクラちゃんが詰め寄ってきた。


『あ〜、うんまぁ…そうだね。家でもカカシさんは隠してる…かな?』


なんとなく、自分が隠してほしいと言った事は伏せてサクラちゃんにそう伝える。


「ちょっと待って…家でもそんな状態なのに、私たち本当にカカシ先生の素顔を見れる日が来るの!?」


サクラちゃんが絶望の表情を浮かべていると、ナルトくんが力強く言葉を発した。


「大丈夫だって、サクラちゃん!!家でも隠してるかもしんねーけど、絶対名前姉ちゃんの頼みならカカシ先生も断れないはずだってばよ!!」

「…確かに、カカシ先生って名前さんの事好きっぽいもんね…。頼み方次第ではいけるかも!」


サクラちゃんのその言葉に、声を詰まらせてしまう。そして何故かスケアさんもゴホゴホとむせている。


『サ、サクラちゃん何言ってるの!?カカシさんが私を好きなんて…そんな事あるわけないよ!!』


確かに彼は私に側にいて欲しいと言っていた。でも、あれはきっと家事をしてくれる人がいなくなるのが困るからであって、決して私に好意を寄せているとかじゃないはずだ。
そんな私の考えを余所に、サクラちゃんは尚も自信満々に答える。


「名前さん…私のこういう時の勘って結構当たるのよ!…そうと決まれば!!カカシ先生を呼び出すから、名前さんちょっと誘惑して欲しいんだけど…」


そう言うサクラちゃんは、何か企んでいるのがわかるくらい顔がニヤけていた。


『…嫌です。何かわからないけど、絶対やらない。それにカカシさんを騙せるような演技、私できない。』


身の危険を感じ、何かを言われる前に拒否した。
あの一件があって以降、関係も前のように戻りつつはあるけど誘惑できるような雰囲気は決してない。


「え〜…でも名前さんがキスを迫ったら絶対カカシ先生『キスなんてしたくありません!』


言葉を遮りそう叫ぶと、サクラちゃんとナルトくんが顔を見合わせて不思議そうに同じ言葉を口にする。


「「名前さん(姉ちゃん)ってカカシ先生の事嫌いなの(か)……?」」

『……別に嫌いじゃないけど、キスしたいとは思わない。』


とにかくこの話題を早く終わらせたい為そう2人に伝え、少し離れた場所でスケアさんとサスケくんが何やら話していたのでそちらに視線を向ける。


「……スケア、あんた大丈夫か?腹でも痛いのか?」

「……いや、言葉の槍がグサグサとね…」

「……は?」

「なんでもないよ…。」


結局、私がキスを迫るという案はなくなり変わりにナルトくんが食事を奢りその食べるところをスケアさんが写真に納めるという作戦になった。

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