12もう一つの花言葉

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『……すごい……』

俺が名前を連れてきた場所。
それは木ノ葉の里を一望できる高台。

見下ろすと街明かりがポツポツと光を帯びて幻想的な世界を創り上げていた。そして高台で街明かりの影響を受けない為、家にいるよりも星がずっと輝いて見える。


『カカシさん!!私こんな綺麗な景色見たの初めてです…っ!』


そう言って、名前は無邪気に笑って見せた。
それがとても嬉しくて、自身も釣られて笑ってしまった。

こうして名前が笑っていてくれるなら、
俺は何を引き換えにしてでも彼女を守ろう。

そう決意し、伝えるべき事を告げる為夜空を眺める彼女に声をかける。


「名前…お前に言わなければいけない事がある。」


俺の言葉を聞いて振り向いた彼女は、少しだけ怯えた表情を見せて。


『……なんですか?』

「名前のその能力は…この里にとっては脅威になるものだ。正直名前がこの世界に来たのもその力を欲している奴がいるからだと推測してる。」

『…私は、ここに居てはいけないって事ですね?』


そう小さく言葉を発した名前に、
「そういう事じゃないよ。」と優しく伝える。


「ただ…今後俺がいない時は護衛をつけるようにする。他にも事情を説明して協力を得る者を集う。
また監視されていた時のように息苦しい生活になるかもしれない。…それを許してほしい。」

『なんで、そうまでして私を…』


戸惑う彼女をまっすぐ見つめ、言葉を紡いだ。



「…名前の帰る場所が、あの家だからだよ」



向こうの世界で帰る場所はどこにもないと言った名前。なら、この世界で俺が居場所を作ってやればいい。


その言葉に名前は目を大きく見開くと、次第にその瞳から涙が溢れ出す。


『…っでも、私には…力があるんですよ…?
触れたら…関わりを持ったら…っ迷惑を…っ』


名前の頬に流れる涙を掬い、そのまま両頬に手を添えて視線を合わせる。


「名前、触れる事を恐れるな。…人と関わる事を、恐れるな。それに昨日お前に言ったでしょ?俺はお前を独りにしない、離れないって。」

『…っなんで、そんなこと…っ』


尚も両目から大粒の涙を流す名前を見て、一番伝えたかった言葉を伝えた。


「それは名前、お前の事が好きだからだよ」


俺のその言葉に、名前は先程と同様目を見開き戸惑いの表情を見せる。


『でも私は…彼と"約束"を「わかってる。」


死した者との"約束"が、どれだけ尊いものか俺は知っている。…その約束を叶えられなかった時の苦しみも。

それでも、だからこそ、俺は。


「名前が彼との約束を大事にしていても…
それでも、俺"が"名前の側に居たいんだ。」


以前、お前が言ってくれた言葉で俺が救われたように、名前にとってもこの言葉が救いになるようにと想いを込めて。


『カカシさんは……っ優しすぎます……っ!』

「好きな子に優しくするのは普通でしょ?それにこれは俺の我儘でもあるし、本当の優しさになるのか疑問じゃない?」


そう言って泣き止まない名前を優しく抱き締め、頭を撫でてやる。


「…そうだ、名前。ホウセンカの花言葉は1つだけじゃないんだって。知ってる?」

『…?知らないです…』


顔を上げ俺を見る名前の身体を少しだけ離し、視線を合わせる。そして以前いのから聞いた言葉を思い返し―――




―――・・・・


「カカシ先生、花言葉って一つだけじゃないのよ?知ってる?」

「他にもあるのか?」

「あのね―――………」


―――・・・・



「……"心を開く"……なんだって。」


静かに、名前の目を見て伝えた。


『……心を……?』

「そ。俺はそっちの花言葉の方が好きだな。…だから名前、少しずつでいい。自分の気持ちを押し殺さずに、人に伝える努力をしてくれ。」

『自分の……気持ちを……、』


小さく呟き暫く沈黙した後、未だ涙に濡れる瞳をこちらに向け名前が静かに言葉を発した。


『私…この世界に来て…カカシさんと出会えて…よかったです。』



―――え、待って。何その可愛い発言。

確かに自分の気持ちを伝えろとは言ったけど、今ここでその言葉は反則でしょ。


先程の発言に硬直している俺を他所に、名前は再度口を開き。


『私と出会ってくれて…、ありがとうございます。』


そう言葉を溢し、潤んだ瞳でふわりと微笑んだ。


「…あー、名前ごめん。ちょっと我慢できないかも。」

『…?』

「嫌だったら後で思いっきり殴って。」

『なん…』


続く言葉を聞かず名前の頬を両手で包み込み、彼女の唇に自身のそれを重ねた。

それは、口布越しのキスだったけれど。
愛しいと思うこの気持ちが伝わるように願いを込めた。


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