31心のコエで名を呼んで

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***


木から木へと飛び移り、森の中を駆けていく。
木ノ葉を出てから数時間、ひたすらに進み続け名前のいる場所へと向かう。
空の色は朱く染まり、徐々に深い闇へと移り変わっていた。


「……!止まってください!!」


と、突然先頭を走っていたテンゾウが叫び飛び移った先の木の枝で立ち止まった。


「どうした!?何かあったのか!?」


俺がそう問うと、テンゾウの表情が曇る。


「…っ、送信木が…破壊されました。これ以上は追えません。」

「なんだと!?」


その言葉に再度絶望の淵に立たされた。
唯一名前を追う手がかりだったモノがなくなってしまったのだ。


(…しかし立ち止まっている暇はない。
何か他に探し出す手段を見つけなければ…)


そう頭で考えていると、不意に自来也様が言葉を発した。


「…テンゾウ、お前世空眼で飛ばされた時木ノ葉のすぐ外だったと言っていたな?」

「え?……ええ、気付いたら門の外にいました。」


その言葉を聞き、自来也様は何やら考える仕草を見せる。


「ということは…あの眼を使うのはチャクラの消費も激しいという事かもしれん。一度で目的地まで移動する事を優先するとなると…案外近くにアジトがあるかもしれんのォ。」


(…確かに自来也様の考えは的を得ている。)


奴は異世界へ行く時も大量のチャクラを消費したと言っていた。
その時はチャクラを温存する理由もなかったかもしれないが、こちらの世界でチャクラ切れを起こすとその後何かしらの戦いになった時不利になる。

だからあの眼を使って国境を超える程の移動をする可能性は低い。
…しかしそれが分かったところで問題は変わらない。


「確かにそうですが…ただ現状打つ手がないのも確かです。忍犬を使おうにも辿るニオイもない……影分身で闇雲に探すのも時間とチャクラが無駄になる可能性が高い。何か他にいい案があれば―――」



――― 『……カ…さ……』 ―――



その時、ふと聴こえた……微かな"コエ"。


(…なんだ?今"コエ"が聴こえたような…)


「……先輩?どうしました?」

「いや、テンゾウお前……
今名前の"コエ"聴こえなかったか?」

「名前さんの…?いえ、ボクには……」


テンゾウが言葉を途切らせ、眼を見開いた。


「…っ先輩!!彼女以前、ボクだけに"コエ"を伝えた事があったんです!!他の人には聴こえないよう、特定の人だけに伝える事が出来るようになったと!!」


それを聞くと同時に、再度頭に名前の"コエ"が響く。


――― 『……カカシさ………』 ―――


(…っ名前!!俺の"コエ"は聴こえてるか!?聴こえたら返事をしろ!!)


しかしこちらの"コエ"は聴こえないのか、名前が反応を示す事はなかった。


「……っ、名前は今無意識に伝えている。俺の"コエ"は届いてないみたいだ。…だが、この"コエ"を頼りにすればアジトが分かるかもしれない。」


そう言い終えると印を組み、影分身を5人程作り四方に拡散させた。


「"コエ"が聴こえたからと言ってアジトの場所が特定できるのか?」


自来也様が拡散させた影分身達を目で追いながら俺に問いかける。


「はい、名前に近付けば近付く程"コエ"も大きくなります。なので影分身でそれを頼りに探せば…」


暫くして影分身自体が解術し、俺の中に情報が戻ってきた。


「…よし、場所は特定できた…行こう。」


そう2人に声をかけ、得た情報を元に再度深い森の奥へと足を進めた。



       





影分身から得た情報の場所へ行くと、一つの洞窟に辿り着いた。しかし中へ足を進めてもアジトらしきものはなく、遂には行き止まりになってしまった。


「……先輩、本当にここですか?」

「ああ、間違いない。さっきより"コエ"が大きくなっているからな……おそらくこの奥だ。」


言いながら行き止まりになっている岩を確認すると、微かな亀裂が入っている場所を見つけた。

「……テンゾウ、頼む。」

俺の言葉にテンゾウは頷くと、木遁で自身の指を木に変えその亀裂に差し込んだ。そして徐々に面積を広げ力を加えていくと、ガラガラと音を立てて人1人が通れる程度の穴が開く。

「……どうやらここで正解のようだのォ。」

穴の中を確認しながら自来也様が呟いた。そこには人工的に作られた通路があり、点々と明かりが灯っていた。


「……で、どうします?分かれて名前さんを探しますか?」

「いや、手分けして探すより3人でいた方がいい。大蛇丸は名前に腕を治す事を強要しているはずだ。…そして同じ場所に、蓮も必ずいる。敵が複数いると分かっているなら固まって行動した方が―――」


――― 『………』―――



テンゾウに話している最中、名前の"コエ"が突然聴こえなくなった。


「どうしたカカシ。何か「…名前の"コエ"が途絶えました。」


俺のその発言に、2人は顔を強張らせる。


「……急いだ方がよさそうだのォ。」


自来也様の言葉に頷くと、薄暗い通路を音を立てず走り奥へと進んだ。


(…名前、無事でいてくれ…っ!)



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