勝率0%
いくらお金を持っていたって、適わないものだってある。
どれだけの価値があるかなんてわからない。だからこそ、どうすれば適うのか…なんて予想だに出来ない。
「あ?欲しいもの?」
「何を言ってくれて構わないよ。」
「どういう風の吹き回しだぁ?」
「気まぐれ、かな。なにか企んでいるわけではないから心配することはないさ。」
どれだけ安心させようととりつくっても、未だに警戒心を露わにする大に、苦笑がもれた。
本当に、何か企んでいる、とか見返りを求めてるわけじゃない。ただ、彼に勝てるものを誇示したかっただけ。たわいない対抗心、いや嫉妬心というべきものか。
「オイラは腹いっぱい小百合の卵焼きが欲しい!」
「ヨシノー。お前だったら何がほしい?」
「え?…うーん……三丁目に出来た店の鯛焼き、かな?」
あそこ、美味しいって評判なのよね〜。
予想通りな淑乃とアグモンの答えに、大は大袈裟な溜め息をついた。
「でも、なんでもっていうなら有給が欲しいわ。」
急にリアルなことを言われても困る。さすがにそれも自分ではなんともならない。
でも、大の欲しいものはこの非ではない気がする。
「で、君は何が欲しい?」
「ちょっと、聞いておくだけで私は放っておくの?」
「俺なぁ………欲しいっつーか、父さんが帰ってくればそれでいいわ。」
やはり、大は食えない男だ。無欲というかなんというか…家族の事を真っ先に考え行動する。全く、彼らしい。
「でもせっかくお前がなんかくれるっつーんなら……時間、かもな。」
「時間?」
ニッと大は無邪気に笑う。
「楽しいことあんなら、少しでも共有したいだろ?知香も気に入ってるようだし、一緒にいれる時間が増えたらそれでいいぜ。」
全く。この男は本当に予想が出来ない。予想だにしていなかった答えに、顔が熱くなってきた。
「あーヤダヤダ。これだから天然は…」
「俺、変なこと言ったか?」
「トーマに聞いてみればー。」
「ムダよヨシノ。マサルがわかるはずないわ。」
「んだとララモン、コラァ!」
ララモンと大の不毛な鬼ごっこのお陰で助かった。赤い顔がバレずにすんだから。
「マスター。また『負け』ましたね。」
いつになっても、勝てる気などしない。
++++
セイバーズのメンバーってまとまりないよね
12.5.8
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