雑多 | ナノ



流される

※後天的にょた

それは、朝の出来事。
いつも通りに遅刻したのが事の始まり、だったのかもしれない。

「ういーす。わりい、遅れた!」

今日も時刻は八時半。集合時刻指し示す時計の針が、ひっくり返ってしまっている。
遅刻をした人間は、一々停止確認をしない。そう、今の大と同じように。

「ま、マサル…?」

見えたのは、上着を幕仕上げ上半身をさらけ出しているトーマと、メジャーを持って胸部を測る淑乃。

「何してんだお前ら。」

「え、ちょっっ大!?立ち入り禁止って書いてるでしょ!?」

そんな事を言われたって、前方不注意だったに決まっている。咄嗟に出て行くことも思いつかずにいれば、ララモンによって押し出されてしまった。


「一体なんなんだよ……」

「女の子の着替え覗くなんてサイッテー。」

「…女の子ぉ?」

デジタルワールドというのはデータの世界。侵入してきた物も全てデータに変えてしまう。
デジタルダイブした際、ウイルスとでも間違われたのか、知らぬ間にデータを改変され女体となった…つまりそういうことらしい。

「よくわかんねえけど……だったら俺とアグモンが強くなれる可能性もあるのか!?」

「ないわね。アグモンは完成した一個体として確立しているわ。人為的に手を加えないとありえない。大にも何も起きていないなら正常に処理されたんでしょ。」

「??よくわからないけど、残念だな、アニキィ。」

そんな脳筋な二人はさておき。

「しっかし、結構胸あるのな。」

「…デリカシーがないな、君は。好きでなったんじゃない。」

「デリバリーもデモクラシーもあるか!お前にとやかく言われる筋合いねえし。…ちょっと触らせろよ。」

「バカ言わない!」

淑乃に頭を殴られるのも無理はない。トーマも呆れ顔でいるし、冷たい視線が大を突き刺す。

「じゃ、私はトーマの下着を買ってくるわ。何も付けないのはマズいし、ね。」

「あ、はい……」

男の心を持ちながらブラジャーを付けることに恥辱を感じることは仕方ない。赤くなるトーマに、淑乃はわかっていると言わんばかりに微笑んだ。

「あんまり可愛いものは買ってこないわ。それと大。トーマに変なことしないで。」

「わかってるっつーの。誰が好んで野郎にセクハラなんか…」

「さっきやってたじゃない。」

咎める視線から目を逸らし、淑乃が出て行った扉に舌を出す。子供らしい仕草に、ガオモンはやれやれと首を振った。

「ふう、うるせえのがいなくなったな。」

「それでもサボっていい理由にはならない。」

早速サボリの体制をとる大に、トーマは冷たい視線を向ける。退屈そうに遊んでいる椅子を止め、頭をひっぱたくと恨めしそうな視線とかち合った。

「なにすんだよ!働いてほしけりゃご褒美よこせ!」

「子供だな君は。」

「頭がいいと言えよ!そうだな。じゃあ美少女のトーマ様にスカートでもはいて貰おうか?」

「はあ?」

勿論、素っ頓狂な声が上がるのは仕方ないことだろう。

「スカートでもはけば、可愛げも出るんじゃないか?トーマちゃん?」

嫌みを込めて言えば、やはりのってきた。性格は冷静であれども、挑発されれば黙っていられないのがこのトーマである。

「ちゃん付けをするな!それに可愛げなんてでても仕方ない。」

「そうだよなー。元が元だからなー。期待出来ねえよなぁ?」

わざとトーマの気に触るように言ってやれば、思った通りの反応が返ってきた。ムキになり、臨戦態勢をとる青い目が。

「そこまで言うならはいてやろうじゃないか。」

「お、マジで?やりい!」

コロッと態度が変わった大にしてやられた、と気付いてももう遅い。頭を抱える間も与えられず、駆けていく大の姿に目眩までもしてきた。ただただ状況から置いていかれている、アグモンの間抜けな声だけがこの部屋の救いであろうか。

「っというわけで、女子の制服を借りてきたぜ!!」

満面の笑みである。気持ち悪いほどの大の満面の笑みがそこにあった。
サイズはどうしたのか、やどう言って貸してもらったのかはこの際ふれないでおこう。それよりもトーマの身に降りかかる危機だ。

「待て!考え直してみろ。というか冷静になれ。ボクがスカートを履くなんておかしいだろう。」

「なんだよ。トーマちゃんは体だけじゃなく、心まで女になったのかよ。」

「意味がわからないぞ!」

「『男に二言はねえ!』基本だろうが!」

どこの基本だとか、それは大だけじゃないのか、なんてつっこむ間も貰えないのは、言わずもがなである。力任せに押さえ込まれ、トーマが尻餅をついた隙に素早くベルトを抜き取られ、ぎょっとした。
何故こういう『面白い事』に関しては、行動が速いのだろうか。

「ま…さるっ止めろ!」

「男に二言はないだろ〜?」

「ふざけるな!こんなことを――――」

ズボンを脱がせば、男物の下着。これは当たり前である。
色気もない悲鳴を聞きながら足に手を伸ばした瞬間、大の背中に丸いものがぶち当たった。

「ちょっと大!何やってるのよ!」

淑乃だ。いやこの時はトーマにとっては淑乃"様"であろうか。仁王立ちする淑乃に憤慨したララモン。大の背中に当たったものは、ララモンのタックルだったのだ。

「いてえな、何すんだよ!」

「痛くしたんだから、当たり前でしょ!というかセクハラ!『誰が野郎に〜』とか言っておいて、何やってんのよ!!」

烈火の如く怒り散らす淑乃に、大もたじたじである。お説教の隙にガオモンから救出されたトーマは、深くため息をついた。

「全く、バカは何をするかわからない…」

「気持ちは、わからなくもないが…」

「何か言ったか?ガオモン。」

「い、いいえマスター!」

その後、淑乃なよってあっさりとスカート姿のトーマが見れた事は言わずもがなである。

+END

++++
当初は裏にする予定だったけど、メモがないから何書いていいかわからず強制終了。


13.11.19

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