えふえふ | ナノ



異説女尊男卑録1

※全員性別反転
※CP混同



始まりは作戦会議中。アルティミシアが思い出したように発した一言。これが全ての混沌の予兆だった。

「ムサイ」
「貴様は失礼なことを言うな」

会議とは言え、いるのは皇帝だけだったからよかった。混沌の大半は男、喧嘩を売ってると思われてもしかたない。

「女ばかりだと戦力に問題が出る上、うるさいだけだ」
「女をバカにしましたね。男ばかりだと汗臭く、いつ発情するかわかりません」
「貴様など眼中にないわ」
「フフフフ、そうですか」

何故笑うのかは理解できなかったが、不吉な笑いと共にアルティミシアは姿を消してしまった。始めは眉を寄せるだけの皇帝だったがここにいるだけ無駄だ。彼女の不審な言動を気にせずその場を後にした。
この時に止めていれば後の惨劇を回避できていたのだろうか。誰も知るよしはなかった。


*


「な、なんだこれは!?」

朝のコスモス陣営から、似合わない甲高い絶叫が響いた。
紅一点のティナにしては口調は尊大で声も落ち着きを払った大人のものだ。
わなわなと震える金色の姿、この世界では皇帝しかいない。隣ではフリオニールが寝ぼけつつ体を起こしたのがいい証拠である。

「なんだぁ ・・・・・・? 」
「貴様、寝ぼけている場合か!? とにかく離れろ、もたれかかるな!」

座っている皇帝に、フリオニールは全体重をかけてもたれかかる。長い銀髪を頭ごと押しのけ、ベッドから離れて威嚇している。

「つれないなぁ ・・・・・・ 」

諦めて欠伸を漏らして立ち上がったフリオニールと、髪を触った掌を見つめながら皇帝は頭を抱える。

「貴様もか」
「何が?」
「自分の体を見てみろ」
「そういや皇帝声高いよな。しかもいつもより細」
「今頃気づいたか、バカめ」

皇帝からの呆れた視線に、不機嫌になるのは仕方ない。頭へ胸へとさ迷う鋭い視線を追うように、自身を見下ろして目を見開いた。恐る恐る触れば、柔らかい。筋肉のついた男の体ではない。

「あれ」

手に収まるくらいだろうか。小さいながらも脂肪があるのがわかる。なんどか揉みしだけば、ぞわぞわとしたものが背中に沸き上がる。本物だ。
目が完全に覚めて自分と皇帝を行き来する目。そしてようやく理解して、口を開く。

「えぇぇぇぇぇぇ!?」

朝っぱらなのも構わず、2度目の絶叫が響き渡る。状況を理解していないフリオニールの傍ら、重いため息を漏らす皇帝がいた。

皆が集まる秩序の広間へ行けば、動揺が広がっていた。一部からは歓声も聞こえるが、女が少ないのだ。わからないことはない。どうやら皆も被害者らしい、フリオニールは思いため息をついて鼻のティッシュを押し込んだ。

「何が起こったんだろうなー」
「レディが増えてラッキー♪まぁ元男だけど」
「そういうジタンも女の子ッスね」

はしゃいでいるのは元気3人組。この状態を楽しんで、はしゃいでは跳ねて駆け回っている。
そういえば元から女の2人はどうなっているのだろうか。視線を向ければ、ティナとシャントットは男に変わっていた。

「何があったんだろうね」
「ティ、ティナ。離れてよ ・・・・・・ なんだか恥ずかしい ・・・・・・ 」
「たまちゃん可愛い」

クスクスと中性的美人が小さなナイトを抱きしめる。兄と妹のようにも見える2人を横目に、それぞれの戦士へと視線を移してみる。
まずはウォーリア。
鎧のために変化は見られいが、筋肉が落ちたせいか鎧のサイズが合っていないように見える。睫毛も長くなり、唇もふっくらしているという変化はあるが、冷静な振る舞いをしているのはさすがだ。
セシルは元々中性的だ。鎧があるし、変化は見られない。背が縮んで声が高くなったというくらいだろう。
ティナは細く端正な顔つきの美少年。腕に抱かれたオニオンナイトは更に縮み、目も大きくなっている。普通に可愛らしい。
バッツは元々露出の高い服装なのもあり、少し刺激が強い。胸も大きくなりぴっちりとしたタンクトップを押し上げている。下着をつけていないのが服越しにわかり、思わず赤面して目をそらした。
スコールは露出が少ないから助かる。
だが髪が少し伸びて服を押し上げる胸もわかる。スレンダーでクールビューティーというところだろう。
ジタンも胸が出ているのかどうか、判別しづらい。だが体は丸く可愛らしい少女であることは一目瞭然だ。
ティーダは速く走りすぎてよくわからないが、体つきに違いは出ていないらしい。運動をしているためにムッチリしている印象がある。
シャントットはあまり変わっていないように見える。小さすぎてわからない、と言えばきっと魔法が飛んでくる。
皆体が丸みを帯びたり背が縮んだり、声が異様に高くなったり、胸が目立ったりという変化だ。
中でも目立ったのがについたのがクラウド。

「髪、伸びたか?」
「あぁ」

胸は目立たないが、女装セットを装備したように長い金髪を揺らしている。それでも気にせず愛剣を磨く姿にフリオニールは感嘆の声を漏らすしかない。スコールの瞳からは少し戸惑いらしき色が見えるのに、この落ち着きようは年齢からの貫禄か。
感心していると皆の視線がフリオニールの隣で止まった。

「皇帝もいたのか。」
「気づくのが遅いぞ虫けら。」
「お前も被害者か」

ウォーリアが近付きジッと見つめてくるものだから、思わず後ずさる。
金色の鎧に覆われた、細くしなやかな筋肉。元々化粧をしているために違和感は少ないが、くびれのある美しい女帝となっている。
ウォーリアにまっすぐ見つめられて恐怖を感じたのだろうか。皇帝がフリオニールのマントの裾を無意識に掴んできた。

「いつも化粧してる分、違和感はないな」
「バカにしているのか」
「美人だという意味だ」

言い残してスタスタ歩き去るウォーリアにその場の者は唖然とした。
クラウドが顔を一瞬上げ、皇帝をチラ見しつ再び剣磨きに没頭を始めた。手の動きが速くなったのは少し照れているようだ。

「皇帝もってことは、カオス側も?」
「いや王様がこっちにいたからこうなったのかも」
「シャントットさんも知らないなら原因は向こうだろ。何かの罠か?」
「よし、行ってみるッス!!」

元気組がいち早く駆け出そうとしているが、皆も気になるところ。
ティーダとジタンが走り出す寸前でバッツが短い声をあげた。

「でもよ。向こうにも被害があったらティーダの親父さんも」
「それ以上は言うなぁっ!! それは見たくない!!」

バッツの言葉に頭を抱えて踞ってしまった。確かに父親が母親になった姿は誰も見たくないだろう。ガタガタ震えているティーダの横で、ジタンも「クジャが・・・・・・レディに、ねぇ」と呟き顔をしかめている。
ちなみにセシルの姿は消えている。きっと兄に会いに行く準備をしているのだろう。
しかたない、とウォーリアが提案をだした。

「このままでは実力も出せないし、調子も鈍る。フリオニールに鼻血を出されても困る」
「ウ、ウォーリア!」
「バッツ、ジタン、ティーダ、それにスコール。混沌側の様子を見て、出来るなら原因を探ってきてほしい」

少し渋ったが元気に声を上げる3人と、どうしてスコールなのか。
アルティミシアが怪しいためにスコールが彼女の説得に適役だと判断したためだ。ケフカはこんな奇怪なことはしまい。そう言われればスコールは静かに頷いた。

「皇帝はどこ行くんだ?」
「帰る」

皇帝も一足先に戻ってしまい、秩序偵察班も動き出すことにした。

「そういや、セフィロスとクジャが静かだな。ケフカもか」
「イカの話はするな。今来たらどうなるか」
「クジャに笑われそう・・・・・・」
「その話は止めるッス!  また嫌な想像するから!!」

微かに貞操の危機を感じながらも偵察班は仲間に見守られて出発した。



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