えふえふ | ナノ



始まりのはじまり

「お前たち、つき合ってんのか?」と言われてバッツは力なく笑うしかなかった。
好奇心旺盛で思春期なこの少年は案外めざとい。名前は言われなくてもきっと思い浮かんでいる相手は同じだ。チラリと剣を磨く後ろ姿を盗み見ると、ジタンもその視線を追いかけて1人で納得された。
スコール・レオンハート。
成り行きで共に旅をすることになったが、無口で年下なのにしっかりした意思を持った戦士の1人である。協調性がないところが目立つが仲間思いで優しい性格なのは一緒に居た2人が太鼓判を押す。
いつも一緒にいて追いかけているうちに少しずつでも心を開いてくれているとは自負している。ジタンとはもう悪ダチみたいな関係だし、それで満足している。だが彼に関してはもっと、次はもっとと関係に貪欲になってしまう。
これが恋なのだろうと自覚したのはさっきだ。

「好きなんだろ」
「えー、あー、どうなんだろうな」
「なんだよその曖昧な反応」
「今お前に言われるまで思いつかなかったから」
「うわ、無自覚かよ。馬鹿だなお前」
「お前に馬鹿って言われると傷つくんだけど」
「どういう意味だよ!」

取っ組み合ってじゃれ合うとそのままもつれてコロコロ転がる体勢になる。洞窟の中の岩は尖っていてなかなか痛いが、笑いながら頬をつねり合って地面に寝そべっていると冷たい視線を感じた。見上げると呆れた顔のスコール。何も言わないが「また馬鹿をやっているのか」と呆れたため息が聞こえる。細められた視線はおしゃべりだ。

「俺は今日の食料を探してくる」

1人で話を進めて背を向ける姿をぼんやりと眺めていると、顎を肘がつついてくる。ニヤニヤ笑うジタンをいぶかしげに見つめていると、また呆れたため息が聞こえてきた。

「バッツ何やってんだ。早く行けよ」
「前もついていこうとしたら怒られたんだよなー」
「馬鹿野郎! 狙った獲物は執念深く狙って手に入れる、これ鉄則な!」

尻尾が鞭のようにしなって容赦なく尻を叩く。一緒に行きたいのはやまやまだ。
これが恋なのか、と聞かれたらよくわからない。きっと行くのがジタンでもティーダでもティナでも、1人になるのは危ないとついていくだろう。スコールだけが特別じゃない。
だが大切なお守りを渡したのは彼だけだ。そう考えたら自分の中で特別な感情が合ったのだと思う。それが恋かはまだ答えは出そうにない。
1人で唸っていると「行っちまうぞ!」と尾が叩き付けられる間隔が短くなる。仕方ない、思いついたら動くに限る。答えなんて動きながら出せばいい。勢いよく立ち上がり駆け出すと、地面に落ちたジタンの恨みがましい声援が聞こえてきた。



「スコール」
「……やっときたか」
「ん?」
「なんでもない」

巨木の間をゆっくりと進む背中を見つけて、バッツは急いで駆け寄った。まだ遠くに行っていなくてよかった。隣に並んでニカッと笑えば顔を少し逸らされてしまった。
駆けてきた為に少し疲れてしまった。休む為にゆっくりと歩き出そうとすれば思ったよりも早足で進まれて驚いた。引きはがしたいのだろうか、いやこれが本来の彼の早さだ。置いていかれないようについていくと振り返ってくる青い目が見えた。

「なあ、ついていっていいか?」
「ダメと言えば今から帰るのか」
「いやいやいや、それは無駄骨だろ」
「なら勝手にしろ」

許しも得た所で隣を歩く。目を合わせてくれないのは気になるが、性格上仕方ないことだろう。気にすることなく一方的に話しかけては敵を倒し、木の実を見つけてはスコールが登って取りにいく。高所恐怖症は克服出来そうだけどもまだダメだ。いい所を見せるべきなんだろうかスコールも悪い顔をしなかったからいいやと楽観的になっておくことにした。

「なあ俺とつき合ってくれよ」

帰り道に口にした言葉に、スコールは初めて目を合わせてくれた。大きく見開かれる様は子供らしく可愛らしい。笑顔で返せば困ったように視線が泳ぎだす。
顔は赤い。

「どこに」
「ベタなやつ」
「……デートか?」
「そのまさか」
「俺が好きなのか」
「多分」
「多分?」
「さっき自覚したけどよくわかんねーんだもん」
「まだ自覚していなかったのか」
「ん?」
「なんでもない」

なんでため息をついたのかはわからないが、嫌そうな顔ではないから大丈夫だろう。

「それで、どうなんだよ」
「どこに行くつもりなんだ」
「星が綺麗なんだ。この世界も」
「星?」
「一緒に見に行こうぜ! ジタンにはまだ内緒な!」

口の前に指を当てて、無邪気に笑えば目が見開かれた。
星なんてロマンチックな物を見るような趣味はしていないかもしれないし、想像も出来ない。でも他に娯楽のないこの世界では、バッツにとっては楽しみの1つ。
断られるかと思った口説き文句は、呆れた赤い顔でため息をつかれるという返答で終わった。
答えは勿論イエスである。





「俺の告白、今思えば相当酷かったな」
「今自覚出来たのか」
「俺がスコールだったらぶん殴ってたわ」
「殴ってよかったのか」
「手加減してくださいお願いします」

冗談とはわかっているが、ライオンハートを振り上げられたら笑えない。
年下に頭を下げる姿は情けないが、命は惜しい。涙目になりながら抱きつけば小さな笑いが聞こえてきた。少年のような、純粋で背伸びのない笑い。年齢相応なスコールを見ることが出来るのは自分だけだと自負はしている。
引きはがしてもこないし、今は甘えておこうと思う。
欲を出してキスをしようとすればさすがに殴られてしまい、口を塞がれてしまった。

+END

++++
使用お題:ツイッター(創作向けお題bot)さん
誘うとき、どういう風に笑うのかなとか

天然産タラシのフラグクラッシュ講座

16.9.15

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