えふえふ | ナノ



*ままごと結婚

※ED後クジャ生存ルート


「結婚?誰と?誰が?」

デザートエンブレムの書斎一一砂と魔法に護られ潜む、淡い光と静寂のみの城。
その一室の書斎の中には二人の人影と一つの大きな影があった。城の主は読書の手を止め、冷静ながら裏返った声を上げる。

「オレとダガーが。」

大して少年は脚立の上に座り、何をするわけでもなく足をぶらつかせていた。
ジタンはイーファの木の様子を見に行った時、コンデヤ・パタに寄ってきたらしい。しかし先程からのお土産話は、過去の事件の時の仲間との思い出ばかり。それがクジャには気に入らず、同時に興味の対象にはなりえなかった。が冒頭の一言はクジャの興味を引きつけるには十分だった。

「いやでもダガーは気に入らなかったみたいだけどな。もしかして、正式なやつじゃなかったから!!?」

勝手に一人盛り上がる彼にバカバカしい、と冷ややかな目を向け、また興味は魔導書へとうつる。話なんて左から右、相槌も適当なのはすぐに気付かれ文句を言われてしまった。

「でもなんか意外だな。クジャなら食いかかってきそうなのに。」
「なんで?」

冗談ではないのだろう。目を丸くしてるわ尻尾は警戒と不信感に逆立っているわで隠そうともしない。怒る気にもなれず億劫にあぁ、とだけ反応を返したクジャに、何故かジタンが食いかかってきた。

「もうダガーと正式に籍入れてくるぞ!」

拗ねた子供のようだとは本人も自覚済みだ。だがいつもは独占欲と嫉妬とプライドだけは一人前な奴が、ここまで無関心だと傷つくのだ。
そんな弟の心、兄知らず、魔導書を静かに閉じて魔法で棚に戻す。惜しみなく魔法を使い、丁度ジタンの横の本の表紙が見え始めたため、嫌がらせに本を先に引き抜いてやった。そんな嫌がらせなどなかったかのように、自分の手に届く範囲の本を手にとった。

「もう行こうぜ!!」

銀竜をつれてプチ家出をするようだ。それに気付いた銀竜は、面倒くさそうに唸って動こうとはしない。賢明な判断というか、なんというか。この兄弟に巻き込まれるとろくなことがないと熟知している。


「だいたい結婚なんかしたところで何になる?」
「一緒にいられるだろ?」
「そんなこと誰が決めたんだい?」
「そりゃ…夫婦ってそんなもんだろ。」
「"そんなもん"?なにを基準に?」
「あーもう!!」

揚げ足ばかりとるクジャにジタンが音を上げた。しかしクジャとしては虐める気もからかう気もなかったらしい。至極普通にぶっきらぼうに「うるさい」と咎めてきた。

「結婚なんて所詮気休め。男女が"好き"という気の迷いの下、脆い契りを結んで刹那の幸せに甘んじてるにすぎない。実際に心なんて移ろいやすいじゃないか。浮気、不倫、離婚……得られるものは虚しさと憎しみだけさ。あ、財産は大きいね。」
「お前…夢がない。」
「君が夢見がちなだけじゃないのかい?」

クスクス笑いながら立ち上がり、銀竜を背もたれに読書を再開した。『ネクロノミコン』また変な本を読んでいる。しかし興味もあるし、横に座って覗き込んでみた。

「ボクはそんなくだらないものに興味はない。他人に見せつけて唾をつけるよりも、側に縛り付けておくのが一番手っ取り早く効率もいい。」
「お前に好かれる奴は災難だな。」
「そんなこと微塵にも思ってないクセに。」

肩にかかる重み。甘えてくる恋人に形を竦ませながらあぐらをかいた。

「形や儀式なんていらない。君が側にいてくれるだけでいい。」

正面に向き合ったかと思えば、唇に柔らかい感触。驚くことのない、いつもの日常を普通に受け入れる。

「そう言われればそうかもな。」

読書に飽きたのか、気がわかったのか、しやこれは優先順位が変わったのだろう。本を置いてジタンに甘える体制をとった兄の唇を優しく啄んだ。

(オレ達、もう家族だし)
(あれ、新手のプロポーズ?)

++++
クイナって女なのか、これが結婚イベント最大の謎だったり。

10.7.12

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