*大事件続
※クジャ視点
ジタンが風邪をひいたらしい。
一昨日、ボクの看病をしていたことは無関係ではないだろう。別に心配だからじゃなくて。恩を売られた気がして嫌だから。様子を見に来ただけだ。
「邪魔するよ」
返事なんて期待はしていない。そのまま窓を魔術で開け、いつものように侵入する。
いかにも彼らしい、宝やら大量の道具やら、贈り物と思われし物まで煩雑としている部屋。その中心に埋もれるベッドでジタンは眠っていた。
シンプルで綺麗な、ボクの部屋とは大違いだ。
近くにまて近づけば、黄色い尻尾が力なく揺れた。
「ぁ・・・・・・クジャ?」
「今日はくだらない喧嘩をしにきたわけじゃないよ」
「帰れ」
「なっ!?」
せっかくきてあげたのに、その言い種はないだろう。いくら温厚なボクでもカチンときた。
そう言われて「はいそうですか」と帰るバカはいない。一気に距離を詰めて枕元にまで近づけば、怪訝な顔。ざまあみるといい。
「なんだいその物言い。せっかく」
「今日は帰れって」
わざわざ背を向けて咳をするのはいい心がけだ。そんなに酷いのだろうか。顔は真っ赤で目まで潤んでいた。
気づけば枕元に座り、背中を布団越しにさすっていた。しかしお礼ではなく、鋭い視線をだけが返ってくるだけである。
意地っ張りなのは知っていたが、ここはお礼をいうものだろう。親はどんな教育をしたんだろうか。
「帰れ」
同じ言葉を淡々と繰り返すだけだが、潤んだ瞳では迫力もなにもない。年相応な可愛い表情にドキリとしてしまうだけだ。
そんな弱々しい声で威嚇されても、帰るはずないだろう。
額も熱い。
「クジャ・・・・・・」
「命令は聞かないよ」
「帰ってくれよ・・・・・・」
「何故」
「うつる・・・・・・」
思いもしない言葉に目を見開いた。ぶっきらぼうだが、たまに見せてくれる優しさが心地よい。
そんな心配されるのも嫌だ。ただし、彼は別だ。顔が緩んでしまうのが自分でもわかった。
「苦しそうなお前は、もう見たくないんだ」
「弱ってるジタンなんてジタンじゃない」
振り払う素振りを見せた腕を掴み、手に魔力を込める。微弱なブリザ系魔法を使えば、体から力が抜けていく。氷なんかより、よっぽど効く。
「気持ちいいだろう」
「・・・・・・クジャがいい」
「は?」
不思議な言葉に腕が引かれる。唇に柔らかいものが触れて、舐め回される。状況を理解する前に、崩れ落ちたジタンの体を慌てて支えてやる。
ああ、触れた場所がやたら熱い。もう移ってしまったのだろうか。
「お前が可愛いこと言うから、我慢できなくなっただろ。責任とって治して貰うぜ、この熱」
袖で口を隠し、目を白黒させるしかない。不意討ちとジタンの熱い視線に捕まって、頭が動かなくなってしまった。
「人肌で温めると効くらしいぜ?」
「じ、冗談キツいよ!」
「オレもやったけどな」
確かに熱に浮かされながら、温もりを感じた気がした。いや、そうじゃない。それよりも。
「そんな、男同士」
「お前が好きだ」
ジタンの腕に逆らえなかったことには驚いた。放心している間にもベットに引きずり込まれてしまった。
目の前には、赤い大人びた弟の顔。熱に浮かされた熱い目で真っ直ぐ見つめてくる。
「うつすけど、ごめんな」
「その時はまた看病してくれる?」
「勿論」
熱い口付けに、また熱でもでたのかと思った。
+END
++++
甘い(゚д゚)
09.6.9
修正16.7.18
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[mokuji]
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