*大事件
皆さん、大事件です。
あのクジャが目の前で落ちました。
「あれ?」
さっきまで戦ってた相手はどこへ行ったのだろうか。上を見ても、後ろを見ても、横を見ても。どこにも白い影はない。
ワープはセフィロスの専売特許のはずだ。とか考えているうちに、いた。
「クジャ!」
相手のクジャは、下に急降下している真っ最中。猿も木から落ちるというか、クジャも空から落ちるというか。と、ふざけている間にも落ちてるんだけども。
エアダッシュで急いで近づき、抱えて着地。幸いクリスタルワールドの高い所だったからよかった。低かったら間に合わなかったかもしれない。
「クジャ、おいクジャ!」
叫んでも返事はない。赤い頬で、苦しそうに息をつくだけだ。
硬く目を閉じ、荒い息をつく姿が正直、色っぽい。男だから、兄弟だからおかしいことではあるが、俺はクジャに想いを抱いてしまっている。
手入れがされた柔肌にムラムラするが、それどころじゃない。急いで壁にもたれさせ、額を合せる。明らかに熱い。間違いなく熱だ。
「心配させんなよ・・・・・・」
まずはどうすればいい。
薬を飲ませて、汗拭いて、安静にさせて、それから。
「何、してるんだい・・・・・・」
脂汗をかきながら、うっすら目が開いた。醸し出される色気にあてられないよう必死になるしかない。
「何って、汗拭き」
「触らないでっ」
上着に手をかけていると、強くはたかれる。クジャは他人に触れられるのが好きではないことは知っている。弱っているときにも健在だとは、残念、そして傷付いた。
「戦いの、最中だろう・・・・・・」
「病人相手に本気だせるかよ。看病してやるから」
「余計なお世話、」
立ち上がるとバランスを崩してペタリと座り込んでしまう。そのまま股関節が思うように動かないようで、唸り声を上げるだけだ。
(何だこの可愛い生き物、本当に男なのか?)
「無理するなって」
真っ赤になって目を反らすのは、熱のせいか。いや照れているのだと思いたい。強がりたいが、力がでない。そんなプライドが高いところもいじらしく、可愛らしい。
「欲しいものあるか?」
「冷たっ」
「お前が熱いんだよ」
額に手を当てると身動ぎをした。このままキスでもしてやりたいが、怒るし軽蔑されては元も子もない。だから我慢。きっと、これからもずっと。
「冷たい・・・・・・気持ちいい・・・・・・」
「そりゃよかった、ってすりよるなよ」
頬すりよる姿を微笑ましく見つめながら、柔らかい癖毛を優しく撫でる。嬉しそうにすりよる姿は猫のそのもの。尻尾があったら左右に揺れているだろう。
(クジャの尻尾、みたいな)
ぼんやりと尻を見ながら、尾で水筒を腰から取る。氷は溶けてしまっているが、冷たい水を入れていてよかった。器用に蓋まであけ、反対の頬に押し当てる。
「ホラ、暫くこれで我慢な。今飯準備するから」
「冷たいもの食べたい・・・・・・」
「へいへい。大人しくしてろよ」
「ねえ」
「ん?」
「・・・・・・ありがとう」
珍しく素直な姿に、笑みがこぼれた。風邪をひくと、人が恋しくなるのは本当らしい。名残惜しいと腰に巻き付く腕は無意識なのだろう。
「全く。お前は可愛いよ・・・・・・」
可愛い可愛い、俺の兄。傲慢だけども真っ直ぐで、自分に素直で見た目も綺麗だ。いつも喧嘩ばかりだったが、こうやって兄弟らしく仲良くしたかった。
願わくば、兄弟以上の関係になりたかったが、きっとクジャは怒る。下手をすれば弱点にされてしまう。
今はこのままでいい。膝枕に微睡む彼を見つめて、ジタンは寂しく微笑んだ。
(一緒にいるだけで、幸せなのに)
+END
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実はネタを書き終わった今日に熱が出た恐怖。
クジャの呪いか
09.6.9
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