*お約束
体内時計、というものは結構正確に出来ているものだ。
ぐぅと物悲しく鳴いた虫は、顔を上げれば時計の針は90°。なるほど、俗に言うおやつの時間、という時刻ではないか。
「やーめやめ!!いくらやっても終わらないよ〜っっ」
「ジャックの集中力が足りないのです。ホラあとちょっとなのですから、頑張って。」
パシン、と小気味よい音を立てて頭を叩かれ、ジャックは頬を膨らませた。
昨日も今日も、再提出、再提出。そろそろ嫌になってくる。シンクはため息の尽きなかったクイーンの手を借り早々に退場してしまったが、トレイはそうはいかない。一度話し始めてしまうと、数十分。そんなウンチク王に付き合っていては、終わるものも終わらないであろう。
「じゃあじゃあ〜、終わったらご褒美頂戴?なら頑張るからさ〜。」
「ご褒美、ですか…」
押し黙ったということは、真面目に検討してくれているのだろうか。期待すること数分。トレイは顔を上げた。
「わかりました。考慮しましょう。」
「やったー!」
「ただし!ちゃんと、真面目に、終わったらですからね!」
トレイの念押しなどジャックには受け流されてしまった。
さて、報告書を提出して一件落着。
ジャックはご褒美を期待して、胸を踊らせていた。
「ねえねえトレイ?」
「…わかってますよ。目を閉じてください。」
かの0組ともあろうものが、まるで幼児のようなはしゃぎよう。まあそれが彼のいいところ。トレイは微笑み頬を包みこんだ。
「待ってトレイ。」
「?」
「まさかキス、がいいもの…なーんて言わないよね?」
「おや、いけませんでしたか。」
制された唇から、赤い舌が覗き指を這う。
「僕、頑張ったよ?かなり頑張ったよ?その程度じゃ、ねえ?」
悪戯に笑う顔も、無意識ながら目を引く仕草も、魅力的。
ああ、彼には叶わない。
「でも、今口に入れようとしたチョコは頂戴?」
「わかりましたよ。貴方はちゃっかりしてますね。」
++++
忠犬ジャッキーの失敗作
12.3.23
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