よんアザ | ナノ



4.友情よりも、愛情がいい

(ベルゼブブ視点)

子供のころからこの強大な力を持て余していた。高貴なベルゼブブ家に代々受け継がれる、この魔王に並ぶ絶対的な力を。
学生時代はコントロールを誤り、何匹もの悪魔を殺めてきた。そんなことでナイーブになることもないし、なる必要もない。魔界は弱肉強食、死ぬほうが悪い。寧ろ中途半端な力でなぶり殺さず、一瞬に楽にしてやったことを感謝してほしい。
ある程度情緒が安定した頃彼と出会った。身分や格は月とスッポン、だが気があったためにつるんでいた。
その程度のはずだったのに。

「なんだよ、スカトロ王子。今日はおとなしいなオイ。」

「うるさい。失せろ。」

またうるさい奴が現れた。高慢の権化であるルシファーは、いつも自分の都合しか考えていない。普段から迷惑極まりないのだが、今日は拍車をかけて間が悪い。

(よりによって、彼がいる時に…)

振り返るとまだ状況のわかっていないアザゼルが、理解しようと脳を働かせている姿が目に写る。

「なをとか言えよ、クソ虫よぉ。」

「だからうるさいと言っている。」

彼がつっかってくるのに理由なんてない。十中八九、ベルゼブブが我を忘れるほど表情を歪める様を見てあざ笑いたいのだろう、そうに決まっている。
いつもなら暇つぶしとストレス解消を兼ねて挑発に乗ってやってもいい。だが今は"彼"がいる。本性を見られることが嫌なわけはない、それによってルシファーも本性を現すことが面倒なのだ。

「ルシファーはん、さすがに言い過ぎちゃいます?そりゃべーやんは相当な悪食やけど、本能ならしゃーないですやん。」

遠まわしに自分を擁護してんじゃねえよ、普段ならもれる悪態は今回だけ許してやろう。鼻で笑うルシファーに一瞥をくれてやるとアザゼルの脇を通り過ぎた。

「行きますよ、アザゼル君。」

「べーやん、青筋浮かんどるで。」

トントン、と眉間を指差されて自分が悪鬼の顔をしていたことに気がついた。よく自らの趣向を貶されてここまで耐えた、と。しかもあの宿敵ルシファーに貶されて、だ。
認めたくない、認めたくないが

(アザゼル君が、いる、から、)

今ここで争えば確実に死ぬ。グリモアが天界にいかぬ限り再生を繰り返すが、その不死の苦しみは真の苦しみなどとは比べのもにならない。彼が苦しむ姿は見たくない、悪魔らしくないとわかってはいる。

(これが、人間のいう愛情というのならば)

「…べーやん、どないしたん…?…今日のべーやん……なんかおかしいで……」

今の自分はどんな顔をしているのだろう、知りたくもないしこれ以上彼に失態を見せたくもなかった。

(自分ばかりが苦しむのは、納得いくわけがない)










(友情よりも、愛情がいい)


+END

++++
無理矢理すぎて

11.8.1
修正:11.10.17

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