*Good night.
※8巻と連動
「…あ、べーやん……?」
「目は覚めましたか?」
頭に伝わる、優しい体温。無骨で不気味な手だが、慣れたらこの指すら愛おしく思える。
「よかった…」
「また勝手に上がってからに…」
「アナタの母上には許可をとりましたよ。」
「ババアからの許可なんぞ許可に入るかい。」
固い指も、固い膝も払いのけはしない。
泣きそうで嬉しそうな表情を見ていたら、何も言えなかった、何も出来なかった。
「また、目を覚まさなかったらどうしようかと思いました。」
「もう大丈夫やと言うたやろ。」
「そんなこと、誰にもわからない。」
「ワシのことはワシがようわかっとるわ。」
頬に落ちた雫が、ゆっくりと伝う。
「アナタも、私がいなくなった時、泣いたでしょう。」
一滴、
「私にも同じ気持ちを抱かせるつもりですか。」
二滴、
「逝くなら私もつれて逝きなさい。」
三滴。
雫はゆっくりと染み込んでいく。汚れたシーツに、綺麗な心に。
++++
アザゼルさんとマンダ氏とサキュ以外受けに見えてきた
12.5.28
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