*一酔い
「気持ち悪い…」
「そらそうや。限度知らずで飲んどってんから。」
失態も失態、大失態。
まさかベルゼブブ家当主ともあろう者が、酒の量を間違えるとは。
おまけに悪友であるアザゼルに肩を借りることになろうとは、穴があったら入りたい。
「何故止めてくれなかったのです…」
「憂さ晴らしでもするように飲んどったんや、止められるかい。」
また吐き気がする。立つのも座るのも、ましてや歩くなど言語道断である。
「アザゼル君、も、離してください…っ」
「こんなところで寝とったら襲われるで。」
「何をバカな…」
「バカもアホもあるかい。ホラ、行くで。」
羽を広げてまで運ぼうとするが、動こうとしない。溜め息一つ、しかし名案も一つ浮かんだ。
慣れた手つきでケータイを打ち込み、また荒々しくケータイを閉じる。
「まっとり。すぐ来るわ。」
何が来るかも聞かされぬまま、ただ力なく横たわるしか出来ない自分に、更なる圧力が加わる。アザゼルの抱擁だ。
「何するんですっ」
「触れとかんといかんやろうが。」
「…さくまさんを呼んだのですか。」
「女は便利なもんやな。」
「また潰されても知りませんから。」
とりあえず、今はその余計な事がありがたい。少々度の過ぎた行為にも、目は瞑ってやろうではないか。
++++
俺と同じ目に会うといい…っ
12.3.2
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