よんアザ | ナノ



*暖かい

有名人とは難儀なものだ。
知名度が上がることは悪くはないが、多忙になり暇がなくなる。
必然的に友人と会う時間も、声をかけられる回数も減り疎遠になり縁も切れる。
親しいでは止まらない。例え恋人と言われる関係でも例外ではないのだ。

「べーやん。終わったんか?」

「アザゼル君っ!仕事場には来ないように言ったでしょう!」

「今日はよ終わる言うたやろ。」

木枯らしも吹き始め、すっかり秋の色も落ちてしまった灰色の都会の中、目立つ赤があれば嫌でも目につくだろう。悪友兼交際中のアザゼルである。

「とりあえず帰ってください。」

「もう会って話してもうたから関係者やてバレとるわ。ええんか?こんなとこおって。」

彼の言うとおり。通行人から仕事での関係者まで数知れない人からの注目を浴びてしまっているこの事態は、いいものではない。笑うアザゼルへの制裁は今度でいいとして。

「移動しますよ。」

「いきなりホテルとは…大胆よのう。」

「飯の調達だよクソヤロウ!」

見えないように小突き、いち早くこの場を離れたかったのだが、首に何かが巻きつき後ろへと戻される。

「風邪引くから巻いとけ。」

先程まで彼の口元を覆っていたはずのマフラーが消え、首もとを他人と毛皮の熱が親切に温めてくれる。

「あ、ありがとうございます……」

「で、晩飯はなんや?ウチか?」

「媚薬を入れられてはたまりません。外食ですましますよ。」

「なんや、つまらんのう…」

繋いだ手も、暖かい。

++++
さくちゃんがカレーの隠れ名店を営んで、べーやんがいきつけてる設定まで考えてました、オチがないので

ついったさんありがとう

11.11.26

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