犬も食わない
※アストラル&96人間転生パロ
※96がすごく丸くなってます
No.96・ブラックミストが地球に現れたのは、アストラルと同時だった。かつての敵までもが復活しとなると身構えずにはいられない。
『俺とコイツは表裏一体。コイツが人間になったから、俺もなる。コイツがココにいるからココにいるだけだ。ナンバーズの力なんてもうねぇよ。』
ブラックミストはそう吐き捨てたが、納得できるものではない。しかしお人好しがすぎる遊馬のことだ、アストラルも太鼓判を押していることもあり、すぐに受け入れて和解したのだ。
そしてアストラルとブラックミストが一緒に住んでいることは、何よりも皆に衝撃を与えた。
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ここはファーストフード店。今はいつもアストラルと一緒にいる遊馬はいない。変わりに一緒にいるのはブラックミスト。追試のために不在の遊馬と待ち合わせをしているアストラルを、目ざとく見つけたブラックミストが同席してきたのだ。
「で。お前は遊馬と週何回ヤってるんだ?」
そして、まさかのこの質問である。突然のブラックミストのにやけ面と不躾な質問だが、アストラルは首を傾げただけだった。
「やる?」
「そ。男同士で隠すこともねーだろ。」
「やるとは何をだ?」
「まずそこからかよ…」
下品に頬杖を付きながら、ジュースを飲み干すブラックミスト。相変わらず首を傾げて、知り得る知識を引きだそうと必死なアストラル。真面目すぎるエリファスは、下世話な言葉をアストラルに教えてはいないようだ。
「なんだよ。お前ら付き合ってるんだろ?」
「いや。ただの親友だ。」
「マジかよ。馬鹿じゃねーの。」
「貴様に馬鹿と言われる筋合いはない。」
そのままハンバーガーを頬張ると、まるでむくれているよう。ハムスターを彷彿とさせられ、ブラックミストは思わず吹き出した。
「でもお前らには絶対何かあるだろ。」
「何もない。」
「でも、好きだろ?」
ブラックミストの言葉に、ジュースに伸ばした手を止めた。恨めしそうにブラックミストを見つめると、観念したようにため息を吐いた。下がる眉に、逸らされた目。何か心積もりがあるのは明白である。
「遊馬を見ていると、胸が苦しくなる。」
「そりゃ、好きなんだろ。」
「しかし、関係が崩れるくらいならこのままでいい。」
「相変わらず甘いねぇ。」
勢いよくフライドポテトをアストラルに向けると、怯み顔を逸らした。目はフライドポテトだけを仰視している。ブラックミストは呆れた声をだした。
「お前は遊馬とどうしたいんだよ。」
「どう、とは…」
「ただ一緒デュエルがしたい?キスがしたい?セックスしたい?」
「公衆の面前で不適切な発言だぞ。それに遊馬と私は"相棒"だ。」
「遊馬との関係のことはいい。お前の話だよ。」
真剣なブラックミストの顔に、アストラルも驚愕した。
以前は牙を剥いていたブラックミストが、身を案じてくれている。答え倦ねるアストラルに、わざとらしいため息を吐き出した。
「埒があかねえ。な、オレとキスしてみるか。」
「何故そうなる。」
「したいからに決まってんだろ。」
「初めては遊馬とだ。」
即答してのけたアストラルに、ブラックミストは脱力した。ウジウジしているわりに、答えはしっかり出ているではないか。揺るぎない瞳のアストラルに、ブラックミストは半ば飽きてきた。
「アホらし。お前は考え方が古すぎるだろ。」
アストラルに向けていたフライドポテトを食べようとすると、手を引いた瞬間にアストラルがかぶりついた。まさかの横取りに目を丸くする。まるで動物を餌付けではないか。人目も気にせず、マイペースに咀嚼するアストラルに、ブラックミストは穏やかに笑った。
「嫌いな奴とキスしたいって思わねーだろ。それが答えだ。」
口の中のものがなくなるまで喋らないのは、エリファスの教えだろうか。律儀によく噛んで、飲み込んで。口内になにもないことを確認して、口を開いた。
「遊馬が好き、か。」
「今から遊馬もくんだろ?」
「ああ。」
「その時に告れ。」
もう一度フライドポテトを向けてやると、アストラルは迷いなく食いついた。遠慮がないのは信頼の証とするとして、しかし人が持っているものを平然と取るのは如何なものか。言ってやりたいことは山ほどあるが、優越感に免じて許してやろう。
「っと。いいところにきたな。」
肩で息をしながら、アストラルを見つけて大手を振る遊馬に、ブラックミストはニヤリと笑った。手を振り返しながら、再びアストラルに餌付けをすると、遊馬から絶叫が聞こえた。店員や他のお客に注意され、世話しなく頭を下げる遊馬に、ブラックミストは勝ち誇った笑みを浮かべた。
+END
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好きだけど、遊馬じゃ勝ち目はないと諦めてるミスト
最初はまた人外イヤッホォォォォウなアスの、夜の相談のはずがこうなった。また書き直そうかな。
14.9.22
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