ゆぎお | ナノ



恋愛戦争


※クロウ視点


最近、ジャックは落ち着きがない。
前から落ち着きはなかったが、前にも増して、というべきか。
理由なんて簡単。新入りであるブルーノに遊星を取られているからである。遊星は元より人気がある。何故ならこの個性豊かで接点などないメンバーを一つにし、チーム5Dsを作りあげたのは遊星の絆を重んじた賜物。幼なじみであるオレも誇れる親友だ。しかしそれをよし、と思わない者が二人。
その一人がジャックだ。

「ゆーせー、まだ出来ないの〜?ねぇねぇ、デュエルしようよーっ!」

「龍亜、、わがまま言わない。遊星もブルーノも大変なのよ?」

今は子どもたちが遊びにきている。子ども好きだし、
相手してやれば基本的すぐ機嫌はよくなる。
問題は、今横のソファーでふてくされている大きな子どもだ。

(まーたブルーノのこと睨んでやがる…)

コイツは俺様で短気だ、それは付き合いが始まって時から知っている。だが最近その短気度が目に見えて上がった。補足するならブルーノに対して、だ。
わがままな子どもは独占欲も強いらしい。構って貰えないことに相当気が立っている。目立つ事が好きだから、無視されることに慣れてないこもあるだろう。どこまで性格に難があるんだ。
それとあと一人。

「遊星!」

「あ、アキ姉ちゃん!!」

教科書を抱え、学校帰りの少女が可愛らしい笑みを浮かべて駆け込んできた。だが彼女もジャックと同じく、仲良く話し込む二人を見て機嫌は急降下。しかも夢中すぎて振り向かない遊星に龍可が困った笑いを浮かべた。
彼女は遊星に想いを寄せている。自分達とは全然違う態度を見ていれば一目瞭然だ。
機嫌を損ね、踵を返そうとしている図は前にも見た。だが今日はすぐ戻ろうとせずにこっちを見た。正確には、イライラMAXで今にも癇癪を起こしそうなジャックを。

「あら、相変わらずの仏頂面ね。」

「今日は貴様の嫌みを聞き流してやれる余裕はないぞ。」

いや、いつもだろ、という皆が思ったであろう言葉はあえて口にしなかった。今言えば確実にコイツは癇癪を起こして暴れかねない。それを諫めるのはいつもいつも自分の仕事だ、面倒なことこの上ない。はぁ、とため息が漏れる。

「おい遊星ーブルーノー、そろそろ休めよ。」
振り向かない。
これにはさすがにイラッときた。

「いい加減休めっつってんだよ!前も徹夜しやがって!焦るのはわかるけどな、お前に体壊されたら誰がソレを改造するんだよ!」

横に立ち机を叩けば目を丸くして見上げてくる四つの目。本気で気づかなかったらしい。呆れたものだ。
うっすら浮かぶ隈を見れば見るほど心配を通り越して怒りすらわく。

「遊星、客が来てんだよ。失礼だろ。」

後ろ指で三名を指してやれば、これまたやっと気づいたようで重い腰を上げた。

「ブルーノ、お前は寝とけ。夕飯には起こしてやるから。」

「うん、ありがとう…」

そういやこの二人が最近睡眠と食事をとっているところを見ていない気がする。人間、特殊な奴がやる気になれば欲すら抑えられるらしい。今にもその辺で寝そうなブルーノを部屋に押し込め何度目かわからぬため息をついた。

(あとはコイツか…)

次はアキへの敵対心をむき出しにしだした金髪を横目に見る。普通は遊星を睨むべき場面なのだが、いささかこの人物は普通から離れてしまっている。
実は、この幼なじみ兼悪友二人は付き合っているのだ。男同士で付き合っている時点で常識もクソもあったもんじゃない。別に身の回りの非常識にとやかく口出しするわけじゃない。ただ自分がそれに巻き込まれないよう願うだけだ。
しかしお人好しな性格上その願いが叶ったことはない。

「あーっ!アキ姉ちゃんズルい!遊星取ったー!」

「龍亜。龍可もすまない。すぐ終わるから待っていてくれないか。」

「ううん、全然気にしないよ。」

「じゃあじゃあ次デュエルしようよ!!せっかくだしタッグで!!」

「そうね。」

ここにきてついにキレた。
勢いよく立ち上がると大股で愛機へと足を進めるジャックのコートの裾を掴む。美形の怒り顔は怖いというが、今のコイツはそんなもんじゃない。知り合いじゃなけりゃ近づくことすら願い下げな面をしている。このままじゃ殴られかねないため、遊星を指差してやる。ジャックが遊星のほうへと視線を移すと、目に見えて困っている遊星の顔。

「ジャックすまない。」

「…」

「よかったら後で部屋に来てくれないか。」

「後とはいつだ!?」

「夕食が終わったらだ。」

申しわけなさそうに言う遊星に、ジャックは真っ赤になる。怒りかと思いきや、これは違う。照れているのだ。どんな意図が伝わったのかは知りたくもないし、いい雰囲気をぶち壊して再び怒りを買うのは遠慮したい。

「ふ、ふんっ!そういうことなら待っていてやろう!!貴様がそこまでいうならな!」

一気に機嫌は急上昇。ツンデレなセリフにはこっちまで恥ずかしくなってくる。

「やれやれ、痴話喧嘩は余所でやれっての。」

嫌みな恋愛戦争に巻き込まれたクロウは大きくため息をついた。
しかしまだまだこの戦争に終結は訪れそうにない。アキがこのバカップルのことを諦めない限り。

+END

++++
アキちゃんは初の勝ち組

10.6.15
修正14.10.1




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