ゆぎお | ナノ



パニック!海馬編


@海馬編


あらすじ。
もう一人の僕ことアテムが人間に転生して、再び遊戯の前に現れた。しかし、体は女体となっていたのだ。

先程から止むことのない沈黙。遊戯は床に正座して壁を見つめながら、アテムは布団にくるまり恥ずかしそうに下を見つめている。お互いに相手を見れず、気まずい空気だけがただ流れている。先に動いたのは遊戯だった。

「とりあえず、どうしようか…。」

「……服が欲しいぜ…。」

「ごめんね。女の子用の服なんて持ってないからさ…。」

アテムが冥界へと帰還し、そんなに経っていない。だが2人の間には見えない壁があるようだ。遊戯においては出来るだけアテムの肌を見ないように心がけている。それがアテムを不安にさせてしまう。

「じいちゃん達も説得しないとね。」

「すまない相棒。いつも迷惑かける。」

「気にしないで。君といられたら十分だから!」

「相棒…。」

遠まわしの告白に、アテムは頬を染める。甘い空気が流れ出した中、邪魔をする存在は何時でも現れるものだ。嫌な意味で慣れてしまったブロペラの音に、二人は顔を見合わせ溜め息をついた。
断っておくが、ここは住宅街である。

「遊戯ぃぃぃ!!」

もう一度断っておくが、ここは住宅街である。しかし窓の前にホバリングしているのは、間違いなくヘリコプター。そしてヘリコプターから叫んでいるのは、クラスメイトの海馬である。
彼の奇行には慣らされたが、あろうことか窓ガラスを突き破って飛び移ってくるとは思わなかった。
ガラスを割られてはたまらない、遊戯は謎の反射で窓ガラスを壊れんばかりに素早く開けた。
海馬も窓ガラスも無事、だが土足のために部屋の床には汚れがついた。迷惑な話である。着地を終えると、遊戯を嘲笑うように見た。


「ふぅん、ご苦労。」

「海馬君、なにしにきた来たの?今立て込んでるから帰ってくれないかな。」

真顔で威圧を送る遊戯だが、海馬は全く聞いていない。それどころか遊戯すら見ていない。
視線はユウギで止まっていた。徐々に見開かれる目に怯えているユウギ。やはりというか、ライバルである海馬には女となってしまった姿は見られたくないのだ。普段は堂々としているユウギが、今回ばかりは女々しく遊戯の背に隠れてしまった。
その姿に怒りを覚えたのか、海馬がワナワナと震え始めた。

「なぜ貴様が2人いるのだ!?」

まずは最もな叫びに、遊戯はユウギを守るように腕を広げた。面白いほどに海馬は動揺している。

「知っててきたんじゃなかったの?」

「何をバカなことを!俺はただこなくてはいけない気がしてきただけだ!」

「うわぁ電波だ。」

「海馬は変わらないな。」

聞こえよがしで失礼な会話に、海馬は怒りで震え始めた。

「許さん……許さんぞ貴様等ァァァァァァ!!」

「海馬君。朝だし近所迷惑も考えてね。」

冷静な遊戯の発言にも怯まず臆さずに、海馬はヒステリックに叫んだ。

「こんな非現実的なことがあってたまるかぁぁぁ!!」

怒るポイントは、ずれていた。

「あ、そこなんだ。」

「海馬らしいぜ。」

白けた目をする遊戯に、懐かしさにクスクスと笑うユウギ。口に手を添える可愛らしい仕草に、海馬が押し黙った。

「ふ、ふん……また貴様とデュエルが出来るならば大歓迎だ。早速俺とデュエルだユウギ!」

いきなりユウギを抱え上げて高笑いを放つ海馬。いつも通りだった光景だが、今日からは勝手が違うのだ。
遊戯は素早く目を見開いた。

「海馬君。少女誘拐現行犯で警察呼ぶよ?」

笑顔でドスを利かせながらに手にはケータイがある。しかもいつ盗ったのだろうか。海馬の物である。

「少女?何を言い出すかと思えば妄言か。」

鼻で遊戯を嘲笑いながらユウギを抱え直すとユウギの目が見開かれた。

「胸に触るな変態っっ!」

遅れてユウギも抵抗を開始した。
海馬の脇に捕まれながらも暴れ、腹部や顎を殴っている。つま先は膝の裏を攻撃している。
そう、抱えている腕はちょうど胸の近くなのだ。まだ女の体に慣れていないユウギだが、触れられては気分のいいところではない。
最終的には股間に一撃を入れたことで、海馬はユウギを解放せざるを得なくなった。

「相棒〜っっ」

「よしよし、大丈夫だからね。」

相手が海馬だということもあり悔しさが増し、遊戯にすがりつく。役得だ、と笑う遊戯だがユウギには見えないようにと心がけている。

「流石はユウギ……っ貴様との戦いは俺の力を極限まで…」

「海馬君。今日はいつもに増して頭が悪そうだよ?」

どうやら海馬の中では既に戦いは始まってたようだ。1人満足した笑みを浮かべる海馬を気味悪がり、遊戯たちは仲良く距離をおく。

「しかし女みたいな反応をするというのはどういうことだユウギ…!まさか女になったなどと非現実的な事を言うのではあるまいな……」

「その通りだって言ったら、どうする?」

「あ、相棒!」

慌てて止めようとしたユウギだが、海馬の視線が突き刺さる。しかも胸にだ。普通に変態だ。布団のシーツを強く握り、真っ赤になって睨み返すユウギに海馬の一言。

「…やっぱり男ではないか。何もないぞ。」

「ッ!」

ユウギは胸を隠しながら屈辱に真っ赤になり海馬を睨みつける。元は男だが今は女、プライド高いユウギは少なからず傷ついたのだ。

「フゥン。触ればわかるのか?」

その瞬間だった。

「もしもし。警察ですか?今女の子がセクハラ発言をされて……ハイ。場所は…」

遊戯の冷静な説明口調に海馬の動きが止まった。携帯を耳に当て、まるで電話をしているような遊戯。電源ボタンを押すとにっこりと笑った。

「海馬君、よかったね。すぐに迎えが来てくれるよ。」

「何をバカなことを…。」

投げ渡された携帯の画面を確認すると、そこにはこう書かれていた。
『発信履歴110』と。
窓が勢いよく開かれる音の後に、海馬は飛び出した。器用にヘリコプターから伸びる梯子へと飛び移ると、逃げるように去っていった。
ヘリコプターの後ろ姿を窓から乗り出し、見つめていた遊戯から一言。

「明日の新聞記事のトップは『海馬コーポレーション社長、セクハラで捕まる』だね!」

このときの遊戯の表情は子供のように無邪気だったという。


「ところでさ、相棒…」

「ん?なぁに?」

「…胸はやはり、大きい方がいいのか?」

海馬に言われたことを気にした、上目遣いの可愛いユウギが見れた事には感謝したい。しかし様々なセクハラ発言をした海馬に、改めて強烈な殺意が芽生えた遊戯だった。


++++
昔から社長は元気です。

修正15.2.10



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