ゆぎお | ナノ



男の戦い


※アストラル視点
※アストラル&真月人間転生



「遊馬君!一緒にお昼ご飯はどうでしょう!」

「おう!」

昼のチャイムと同時に現れたのは、人懐っこい笑みを浮かべた真月という男。アストラルは、遊馬に駆け寄ろうとして足を止め先に真月を睨み付けた。

真月、またの名をベクター。元々は世界の命運をかけて戦ったほどの相手である。卑劣で邪悪な数々の作戦に、遊馬だけではなく友人たちの命まで危険に晒された。
そんな彼も、元は善人だったよしみなのだろうか。今はアストラル同様人間として地球で暮らしている。
遊馬の性格も考慮し、そこまでは許そう。
だがクラスは違うのに、いつも真月は遊馬の元へとやってくる。あまつさえ遊馬に友人を超えた想いを寄せているなど、アストラルには許せることではなかった。小鳥まで振り切ってくる辺り、油断も隙もない。遊馬を連れて小鳥から逃げるように動く真月に、遊馬が特に触れないのもどうかとも思う。

今も屋上で弁当の包みを開きながら、目だけで戦っている。真月の勝ち誇ったような、相手を見下す目がアストラルの神経を逆なでする。

「やべえ!ハシ忘れた!」

場を和ますように忙しなく立ち上がる遊馬につられて、アストラルも反射で立ち上がった。

「私も付いていこう。」

「いいって。先に飯食っててくれよ。」

答えるや否や、遊馬は屋上から飛び出していった。残されたアストラルが膨れっ面でその場に座り込むと、クスクスと笑い声が聞こえるた。勿論真月だ。

「フられちゃったねー、アストラルちゃん?」

早速戦いの火蓋は切り落とされた。イヤミな笑いにアストラルは眉を寄せる。しかしその程度で怯む真月ではない。口角を釣り上げ、挑戦的に返すだけだ。

「もうお前はいつも遊馬と一緒にいれるわけじゃないよなぁ?」

真月のイヤミな態度には腹が立つ。言い返してやりたいが、正論である。アストラルは押し黙るしか出来ない。

「もうお前の邪魔はねえ。遊馬はこの俺が貰う。」

「それは、遊馬が決めることだ。」

「へーえ?自信があるってことかなぁ〜?『遊馬は私を選んでくれますぅ〜』…ってか!?」

嫌みをたっぷりこめた声真似に、アストラルは眉間に皺を寄せる。そんなアストラルをゲラゲラ笑う真月は、人間の顔を捨てたベクターそのものだ。彼には人を怒らせる嫌な才能がある。

「一心同体にもなる、私と遊馬の仲を知らないのか。」

「一心同体なのは昔の話だろ〜?今は別人。いや、別仲か??ヒャハハハハハハっ!」

真月の挑発に乗ってはいけない。わかってはいるのだが、手を抑えるので必死だ。

「遊馬君はぁ、お前みたいな堅物ストイックより、俺みたいな強引で世話焼きタイプの方がいいって!」

「そんなこと、わからないだろう。」

「それがわかるんだなー!なんせ遊馬は俺の事を親友って言ってくれたからな!」

勝ち誇る真月にアストラルの表情が曇る。言い返す言葉が見つからないまま口を開くと、騒がしい足音と共に遊馬が戻ってきた。

「お待たせ!…ってアストラル。どうしたんだ?」

「遊馬…。」

テンションの低いアストラルが気になり、遊馬が労いの声をかける。それを真月が自然にわけはいり阻止する。

「遊馬君!アストラルは少し疲れただけですって!」

「ベクター…貴様…」

「真月だろ、な?」

子供を叱るように諭す遊馬に、アストラルが顔をしかめた。真月を睨み付けるが、遊馬の肩ごしに舌を出してアストラルをおちょくってくる。遊馬は、アストラルに睨まれていると勘違いし、慌てだした。

「あ、アストラル…俺はっ、悪いことは言ってないからなっ!」

「遊馬ではない。後ろから私を挑発する男に怒っている。」

遊馬が振り返ると、いつもの真月の笑顔。まったくもって仮面を付け替えるのが上手い道化だ。アストラルの顔は険しくなる一方だ。挑発する友人、静かに怒る相棒。遊馬は2人を交互に見て溜め息をついた。

「俺も悪いことは言ってないけどな〜。」

「ここにいること自体が悪いのだ。」

「遊馬、聞いたかよ!アストラルはひっどいねー!」

「遊馬に隠れるなこの小悪魔が。」

地を出した真月と一方的に敵対心を剥き出しにするアストラルに、遊馬は頬をかく。

「なぁお前たち。なんだかわからねーけど、仲良く出来ねえの…?」

遊馬に他意はない。ただ純粋に、"友人"2人が仲良くなることを望んだだけだ。しかしそれはこの場でのタブーでしかない。

「誰のせいだと思っている!!」
「誰のせいだよ、誰の!!」

まさかの怒りの矛先を向けられ、遊馬は息を詰め後ずさる。原因は遊馬自身だとは、夢にも思わない事は仕方がない。
2人に睨まれフェンスまで追い詰められた遊馬は、1人ごちた。

(俺がなんだって言うんだよ…)

無自覚は時に罪になる。

+END

++++
モテモテ遊馬♂

15.1.11



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