ゆぎお | ナノ



天然と事故は紙一重


※女体化アストラル
※先天的人間設定
※名前はアストラル=アスト
※乙女大全開注意




覗きは男のロマン、女体に興味を持てば一度は必ずやってみたいことである。ちょっとした悪戯心だ。
体が弱いアストが、放課後体育の補習を受けていると聞いていたが、わざとではない。すっかり忘れていたための事故だったのだ。


**

「遊馬!?いやっ、見ないで……」

アストの女の子らしい声なんて、初めて聞いた。
丁度制服に着替えていたアストの下着姿。一瞬でブラウスで隠れたために、しっかりは見えなかったのが残念だ。
しかし、思春期の青少年には刺激が強かった。教室の扉を開けたポーズのまま、遊馬は目を丸くして硬直している。アストは遊馬に見つめられていると勘違いし、見る見る顔が赤くなり俯いていく。

「ごっごめん!!」

慌てて回れ右。教室から飛び出すと、扉を勢いよく閉めて、赤い顔を抑えてへたり込んだ。

「うわあああぁぁ、アストの裸、見ちまったか…!?」

「見た、のか?」

「み、見てない!白しか見てない!胸もわからなかった!!」

扉越しに叫ぶと、安堵の息をついた。バッチリ下着の色を見られているが、アストの問題はそこではない。

「私は胸が小さいんだ…遊馬には、見られたくない。」

腕で隠しながら、珍しく覇気もなく呟くアスト。確かに、アストの胸は服の上からも膨らみが確認出来ないほどだ。たまに女の子である事実を忘れてしまうほどに。

「いや、そんなことないだろ……、いや、うん…」

「お世辞はいいんだ。私もわかっている。」

怒りもせず、アストはただ胸の前でブラウスを握りしめるだけ。何を言うわけでもなく、泣きそうなアストを放っておけなかった。

「そんなこと気にすんなよ!人それぞれだろ?」

フォローをするが、アストに変化はない。それどころか、ブラウスを更に強く握りしめ始めた。そんなに気にすることなのだろうか。男である遊馬にはわからなかった。

「アンナはすごく大きい。」

「そうだけど、アンナは例外だろ。」

「私も大きくしたい…。」

「うーん……やり方なんてわからねーし…」

小さいより大きい、これはデュエル飯にも男にも言えたことだ。納得はするが、やり方なんて知らない。

「大きい方が…その、遊馬も……嬉しい、だろう。」

顔を真っ赤にして、口元にブラウスを抱き寄せる姿は、恋する乙女そのもの。遊馬に聞こえることもなく、途中でかき消えたのは不幸か幸いか。ドアに気持ちも阻まれ、噛み合わない心。
別にアストを待つ約束をしているわけでもない、用があるわけでもない。ドアに凭れながら座り込む遊馬の頭上に影がかかった。

「遊馬。何やってんだ。」

通り過ぎたのは、凌牙だった。いつも早々に妹と帰る凌牙にしては珍しい。見慣れた仏頂面で遊馬を見下ろしていた。

「アストと話してた。」

「アスト?アストなんてどこにも…」

辺りを見回し教室に目がいくと、見る見るうちに丸くなる目。凌牙の驚き赤くなる顔なんて珍しい、ではなく。

「アスト!?まさか何か――!?」

立ち上がり、教室を覗き遊馬も真っ赤になる。凌牙の反応で察することは出来るだろうに、アストはまだ下着姿でブラウスを抱きしめていた。二人の視線に気づき、アストも真っ赤になると背を向けて座り込んでしまった。

「ご、ごごごごめんッッ!!」

「てめっ遊馬!着替えてるならそう言え!!」

「シャークも妹がいるのに慣れてないんだな!」

「そういう問題じゃねーだろ!?」

頭にきているシャークが、遊馬に掴みかかったところで、教室の扉が開いた。二度あることは、なんとやら。警戒しながらゆっくり振り返る遊馬だったが、アストはいつものように制服姿で鞄を体の前に持ちながら立っていた。

「待たせたな。」

「いや、そんなことないぜ!」

ほんのりと染まったアストの頬に、シャークの手が止まった。綺麗な笑顔を見ていると、怒りも失せるものだ。逸らされた顔と、遊馬を乱暴に解放すると、突き飛ばされた拍子にアストの肩にぶつかってしまった。

「ごめん!怪我しなかったか!?」

「気にしてない。」

ふわりと笑うアストに、遊馬も頭をかいた。先程のこともあり、さすがの遊馬も気まずい空気を漂わせてしまう。アストも遊馬の様子を伺い、どこかギクシャクしてしまう。

「ったく…遊馬。テメーはアストを待つために、部活も入ってねーくせに放課後までいたのか。」

「あ!デュエルに夢中で、鞄置きっぱなしなの忘れてたんだった!」

「バカが…。」

慌てて教室に入っていく遊馬を見送り、アストは凌牙を見つめる。居心地が悪そうに顔をしかめる凌牙だったが、「なんだ。」とぶっきらぼうに返事を返した。

「妹シャークの、理緒は…その、胸が大きかっただろう?」

「…ああ?」

「なにか特別なことをしているのだろうか。」

「知らねーよ。見てる分には、何も変わったこともしてねーし。」

「そう、か……」

孤高でマイペースなアストが、胸を気にしているとは思うまい。驚きはしたが、遊馬を見つめる切ない目で納得した。

「…あてつけかよ。」

「何か言ったか?」

「別に。」

「わりぃ!待たせた!」

鞄を抱えて戻ってきた遊馬に、アストの表情も明るくなる。すぐさま凌牙から遊馬に向き直り、照れくさそうに笑う。

「改めてごめんな…覗くつもりじゃなかったんだ。」

「気にしてない。シャーク、君もだ。」

「フン。悪かったな。」

「でもいつか、遊馬に…また見てもらうことになると…いいな。」

俯き呟いた言葉は凌牙だけに届き、溜め息をつかせることとなった。

学校で有名な、恋人未満バカップルは質が悪い。

+END

++++
せっかくの先天的人間&にょたなので、乙女全開でいってみました。

14.11.29



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