小さなライバル
※二人は別々の体設定です
※遊戯…本体、ユウギ…ファラオの魂
※ネタバレもあり
「いつも思ってたんだけどさ、クリボーってもう一人の僕にくっつきたがるよね。」
ここは遊戯の部屋。
デッキの整理をしていると、膨れっ面で遊戯がいきなり話をきりだした。手にして入るのはクリボーのカード。見て思い出すことがあるのだろう。
『相棒、いきなりなんだ?』
「だってさ。他のモンスターと違ってよく出てくるし。」
むくれて一人カードと睨めっこする遊戯が微笑ましくて、ユウギはクスクス笑い出した。バカにされた、と勘違いした遊戯に上目遣いで睨まれるが、ちっとも迫力は出ない。
『そう言えば、マハードが一番だぜ。』
「ブラックマジシャンは別だよ。僕たちのエースモンスターだもの。」
モンスターの役割を除いても、ブラックマジシャンことマハードは、ユウギの過去と深く関わっている。一番縁のあるモンスターだから仕方がない。
遊戯が何を言いたいのかわからず、首を傾げるユウギ。その遊戯は、眉間に皺を寄せて、クリボーのカードを睨みつけ始めた。
「まさか、もう一人の僕を狙ってるんじゃないだろうな…」
カードに嫉妬する遊戯に、ユウギは遂に声を上げて笑いだした。「笑い事じゃない!」とぷりぷり怒る遊戯だが、微笑ましくて仕方がない。
『狙うって、まさか。何のために?』
「そりゃ君は可愛いから…」
『可愛いは心外だな。』
「今の笑顔は最高だったよ!」とアピールをするが、ユウギはわかっていない。男の身で可愛いと言われたことに、ふてくされてしまい口を尖らしている。
「そういうところが可愛いっていうの。」
『どこが?』
「…なんでもない。」
デュエルのときは果敢にどんな敵にも立ち向かう。真剣な表情と強気な笑みがカッコいいのだが、デュエルが終わればこの通りである。
まず、警戒心がなくよく海馬に誘拐されてしまう。持ち味の天然で回避はしているが、バクラからも口説かれている。更にはマハードからも"その手"の視線を感じているのだ。遊戯はたまったものじゃあない。
しかし、ユウギはデュエル以外には無頓着。それがせめてもの救いである。
(でも、僕の想いは気付いてね)
いつになったら気持ちを伝えられるだろうか。ため息をつくと、クリボーのカードが光りを放ち始めた。
「な、何が起きてるの!?」
『クリクリ〜!』
光の中から飛び出してたのは、噂のクリボーだった。フワフワとタンポポの綿毛みたいに浮いている姿は間違いない、見慣れたクリボーだ。
外に出られたのが嬉しいらしく、しばらく体を揺らして踊っていたが、二人に気がつき真っ直ぐ飛んできた。
「何で実体化できるのさ!?」
もっともな理由で驚く遊戯とは違い、迷わず寄ってきたクリボーに手を伸ばすユウギ。クリボーも嬉しそうにユウギの胸に飛び込んだ。
『いいじゃないか相棒。デュエルモンスターズには不思議が多い。気にしても仕方ないぜ?』
「君は気にしなさすぎだよ!」
かくいうユウギも、4000年前のファラオの魂。今更不思議な現象を気にしていては負けだ。
遊戯の叫ぶ声も虚しく、ユウギはクリボーと戯れ始めた。胸に抱かれて上機嫌ですりよるクリボーと、不機嫌オーラまるだしの遊戯。和む二人のじゃれあいを眺めていると、ユウギから声が上がった。
「あっ、こら!」
いきなりクリボーが、ユウギの上着を小さな手で捲し上げて潜り込んできたのだ。そして、ユウギの肌にフワフワの毛をすりよせ甘え始めた。暖かい、気持ちいいよりも、くすぐったい。ユウギも耐えられなくなり、身を捩った。
『んっ、止めろって!』
鼻からぬけたような声を上げるユウギ、楽しそうなクリボー。なんだか恥ずかしくなり、顔を赤くした遊戯がクリボーを止めにかかろうと非難の声を上げる。
「もうやめなよ!」
『クリ〜?』
「『なんで?』って顔してもダメだから!!」
無理矢理引き剥がそうとするが、ユウギの服に爪を立てて剥がせない。精神体のユウギにも実体の遊戯にも触れられるとは、クリボー恐るべし。
それはともかく。意地でもユウギにくっつきたがるクリボーと遊戯の、プチ喧嘩に挟まれたユウギは困ったように頬をかく。
『俺はそこまで困らないし…、クリボーの気が済むまで、このままでいいぜ。』
「僕が困るの!」
『どうして相棒が困るんだ?』
「そ、それは…秘密!」
『変な相棒だな。』
綺麗に微笑むユウギに、絆されながらもふてくされる。意外な強敵に戦慄を覚えた遊戯だった。
+END
++++
クリボーは純粋です。
修正14.12.4
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