ゆぎお | ナノ



教えられない


※2人は別体
※闇遊戯=ユウギ表記



「君はいったい何が好きなの?」

どこを見ても人ばかりの都会のど真ん中。平日の学校の放課後帰り道。それでもこの人と車の喧騒は収まる事を知らない。心地よい風ですら時折にしか頬を滑らない。気を抜けば相手を見失ってしまうくらいだ。

「食べたい物は相棒が決めていいって言ったぜ」
「君はいつもそればかり! いつも僕が選んでるじゃないか」
「俺はそれでいいんだが」
「僕がよくないんだけど」

何故相棒が怒っているのかはわかっている。昔から気を使うユウギに対して、何か心の壁でも感じているのだろう。
だがユウギは笑顔で返すだけだ。頬を膨らませて不機嫌を露わにする遊戯を笑っているわけではない、笑って誤摩化すという奴だ。

「いつも君は僕に気を使うね」
「そんなつもりはないぜ」
「無自覚なら無自覚で傷つくよ」
「相棒に傷つかれたら俺が困るぜ」

何も考えずに答えれば、また遊戯が不機嫌になる。「天然」と恨みがましい声で言われても、これが本当の気持ちなのだからどうしようもない。

「早く何が食べたいか決めないとなくなっちゃうぜ」
「……君が食べたいもの」
「早く決めてくれ、相棒」
「だーかーらー!」

急に大声を出すからびっくりした。目を丸くしていると、周囲からの視線が痛いほど突き刺さる。
「双子かな?」「すごくそっくり」「兄弟喧嘩か」
兄弟、と言われた事には少し傷ついたが、恋人には見えないだろう。バレたらバレたで、遊戯が周囲に威嚇を始めるだろう。

「俺が食べたい物は相棒が食べたいものだぜ」
「その言い訳は聞き飽きたよ!」
「言い訳じゃないんだが……」
「とにかく! 今日は君が決めるまで動かないよ」

そう言われても困るのだ。
1人で居るときには食べたい物はすぐに浮かぶ。しかし遊戯が一緒になれば話は別だ。「食べたい」という欲求よりも「一緒にいたい」という欲求のほうが強い。食べるというよりも遊戯の笑顔のほうがいい。
言ってしまえば、遊戯はユウギを優先する。だから言わない。思っていることは同じだから。

+END

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ツイッターお題
あなたは『一番好きな食べ物が答えられない』表闇のことを妄想してみてください。

16.10.26



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