ゆぎお | ナノ



障害物ごと愛してみせる


※遊矢とユート同化後
※隼ユトですが、隼ゆやともとれる



ユートが姿を消してから、幾時が過ぎただろうか。
心が耐えられなくなって、数えるのは10日ほどからやめた。
最愛の瑠璃を失い、日に日に心が毛羽立つのがわかった。それでも地面に足をつき、必死で前に進めるのもユートのお陰だった。
だがそれも限界だ。共に歩んできた者がいなくなるだけで、こんなにも弱くなってしまうとは。

懐かしい声がした。愛する者の声がした。慌てて意識を戻し、声に伸ばした手がつかんだのは遊矢だった。

「何故貴様がそこにいる」
「今ここにいるのは俺たちだけだろ」

逃げるときに他の奴らとはぐれてしまい、坂から落ちたところまでは覚えている。最後に見えたのは、走りよってきた遊矢で、というところでむしゃくしゃして考えるのをやめた。
遊矢は、ユートに似た忌々しい少年。恨みがあるわけではないが、時折ユートと重なる風貌が勘に障る。
手に届くと安堵した瞬間に離れ、掴めない。中途半端な希望は拷問でしかない。
共に行動をしなくてはいけないが、近くにいれば敵意しか生まれない。乱暴に振り払うが、手がまとわりついてきた。
鬱陶しいし行動に殴りかかろうとすると、突然遊矢は微笑んだ。

「隼」

聞き覚えのあるハスキーボイスに、黒咲しか知らない微笑み。気を失っていたかのように、肩を跳ねさせ驚いている彼を、思わず抱き締めてしまった。

「ユートっ!」
「ち、ちがっ!苦しいっ」
「俺がユートの声を聞き間違えるわけがない!」

興奮状態で遊矢にまとわりつき、話すらまともに入ってこない。
ユートがいる。この声と微笑みはユートだ。
そこにいる。
それだけで傷ついた体が勝手に動いた。

「生きていたのか!? もしや遊矢の中に」
「なんでそんなに鋭いんだ!」

強すぎる抱擁から逃れようとしても、体にまわす腕が逃がしてくれなかった。
黒咲の腕ではない、ユートの腕が。

「ユート、なんのつもりなんだっ」

エイリアンハンドに困惑する彼と、混乱しながらも嬉々としている黒咲。
幸か不幸か、ここは人気のない裏路地。
二人が互いに求め合う熱情と嫌な予感の板挟みにされ、遊矢は間抜けにもがいている。
首筋に鼻を寄せて匂いをかぐと、くすぐったさに身を捩る。それはユートの嬉しい時のサイン。証拠にも首を嫌がる彼にもかかわらず、抱きつく力はいっそう強くなる。
気がつけば無言で唇を奪っていた。それでも自ら求めるように伸びてきた舌に、感情が高まりむさぼり合う。
彼は相変わらず嫌そうに目を瞑ってはいるが、端からは嫌がっているフリをしているようにしか見えず、滑稽きわまりない。

「はぁ、ユート・・・・・・」

情欲に濡れた目で見下ろすせば、怯えた幼い表情がある。背中に触れたゴミのクッションと、体が動かない恐怖に支配されて動けないらしい。いつも強気で抱きついてくるユートとは違い、新鮮な表情に加虐心がくすぐられ口角が上がってしまう。

「俺は遊矢! 例えユートと一緒だとしても、別人だろっ」

誘う涙目で、精一杯の抵抗を示されて冷静になれた。
無我夢中で忘れていたが、目にいるのは遊矢で、ユートではない、ただの知人だ。どうしてもっと早く気づかなかったのか不思議である。
この際どうでもいい。
身を捩る小さな体を見ていて何か吹っ切れた。ユートに似た少年を逃がすまい、と腕を掴んで甘く囁く。

「貴様がユートとどんな関係かは知らん。邪魔をするならお前ごと潰す」

邪魔をするものは、それごと愛してしまえばいい。
まずは抱き潰してやろう、と腕に力を込めて遊矢とユートを抱き締めてみた。

+END

++++
なんでいつも普通じゃない感じになるの

16.6.17



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