鏡
※実際の96とは異なります
※すごく96が丸いです
※見やすさのテストで「No.96」表記にしてみました
止まった歯車の軋む音だけが響く皇の鍵の中。アストラルは一人、ナンバーズたちを見つめていた。遊馬のおかげで順調に集まってはいるが、記憶は未だ曖昧なままだ。自分の使命もわからぬまま。
急がなければ。
鍵から出ようとした時、背後からつっけんどんに声がかかった。
『どこに行くんだ。』
振り返ると、ペタリと座り込んだNo.96が、アストラルを鋭い視線で見上げていた。
No.96は今、厳重に鎖で封印している。手足をがんじがらめにし、体と腕をまとめて念入りに特殊な鎖を巻き、皇の鍵の中で見張っている。ここまですれば当分悪さは出来ないだろうと、実体化することは目をつむっているのだ。
『ナンバーズを探してくるだけだ。問題がなければすぐ戻る。』
飛び立とうとするが、まだ視線が絡みついてくる。いい加減にしてほしい、と煩わしさを露わにした目で見つめ返すが、相も変わらずNo.96は真っ直ぐ見つめ返してくる。
『まだ何かあるのか?』
『…』
バツが悪そうに逸らされた視線。はっきりしない態度にアストラルも苛立ってきた。No.96の元に近付くと顔を俯かせて、ボソボソと何か呟いている。
『言いたいことははっきり言え。』
『…』
『言わないならば私は行く。』
アストラルの冷たい態度に、No.96は勢いよく顔を上げた。拍子に鎖がジャラリと音を立て、アストラルはため息をついて振り返った。
『何だ?』
『……お前がいなきゃ、退屈だ。』
やっと素直になったかと思いきや、視線は合わせようとしない。
『…別に構ってほしいわけじゃねー…。』
聞いてもいないのに、この補足。
照れているのだ。
足を抱え壁にもたれながら拗ねるNo.96に向き直り、ため息をつく。しかし、表情は穏やかで傍らまで寄ると、目の前に座り込んだ。
『お前も、おとなしいと可愛らしい。』
『誉めてねえだろ。』
『いや、誉めているぞ。』
No.96の頬を、アストラルの冷たい指が包み込む。目を閉じて接触を受け入れると、唇が重なった。
アストラルの幼いキスに、No.96は物足りなさを感じる。しかし手は使えないために、主導権は握れない。せめて、と開放された口から舌を入れて絡め合うと、アストラルの頬に朱が走る。くちゅり、くちゅりと口内を蹂躙すると、強く肩を押されたことでキスが終わりを告げた。
『可愛いのはお前だろ。天然ちゃんが。』
『はぁ…っ、お前はがっつきすぎる…っ』
息が上がっているのはアストラルだけ。悔しいが、テクニックはNo.96の方が上だ。何か勝てるものはないか、とアストラルはNo.96を押し倒した。
『今日は積極的だなぁ…?』
『私もやるときにはやるぞっ!』
しかし、そこから動きのないアストラル。なれないことに思考停止しているアストラルに、退屈になったNo.96は欠伸を漏らす始末。バカにされた、とアストラルはムキになり顔を寄せ、動きが止まった。
『まるで鏡を見ているようだ。』
『今更だな。』
アストラルとそっくりなNo.96。何故アストラルを模した姿をとったのか、本人に聞いたことはない。理由はちゃんとあるのか、それとも何も考えていないのか。多分、訪ねることはないだろう。
「これは鏡ではない」。そう確かめるようにNo.96の目元、鼻、耳、唇に真剣な面もちで手を這わせるアストラルに、No.96はクツクツと笑う。
『知ってるか?鏡から離れたら、何も写らないんだぜ。』
『そのくらい知っている。』
『俺がいなくなると困るだろ?一緒にいてくれる、な?』
あぁ、鎖が邪魔だと感じたのは、何度目だろうか。抱き締められるはずだった黒い腕に、白が絡みついた。
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最近96アス96の百合が熱いです。
14.11.21
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