ゆぎお | ナノ



天の邪鬼の本音


※遊矢一家同居パロ




「好きだよ」
「嘘かよ」
「それはどうかな?」
「今日はエイプリルフールなんだろ」
「そうだったっけ」
「知ってるくせによく言うぜ」
「じゃあ嫌い」
「おう。知ってる」
「どういう意味かな?」
「そういう意味だろ」

何度目かわからないやりとりに、そろそろ嫌気がさしてユーゴはため息をついた。
背中から布のようにまとわりついてくるのはわがままユーリだ。絶賛ユーゴに恋煩い中、らしい。遊矢とユーリのいうことは基本信じないようにしているため、真実は闇の中である。
実は4月1日が始まってからずっとこんな感じなのだ。この好きというのは嘘か本当か、普段から図れないと言うのに。こんな面倒な行事に乗っかられては更なる混乱を招くだけである。
とりあえず軽くあしらってはいるのだが、諦めるどころか物理的にまとわりついてきたために鬱陶しくてたまらない。さすがに風呂やトイレになると、ユートが止めてはくれた。見守るような優しい笑顔を浮かべていたのには腹が立ったが、唯一の味方を失うわけにはいかずぶっきらぼうに礼は言っておいた。

「ユーゴはどうなの? 好き? 嫌い??」
「......言わねえ」

「好き」といえば、そのままの意味でとられるだろう。逆に「嫌い」と言えばエイプリルフール式にとられてしまう。ユーリという男はそういう男だ。ムカツク話であるが、口喧嘩では絶対に勝てないと自負はしている。恐ろしいまでに悪知恵が働く、それがこの次男坊の恐ろしいところである。

「もう日付が変わるだろ......寝かせてくれよ......部屋に帰れよ......」
「一緒に寝たいならそう言えばいいのに」
「ちげーよ。都合よく事実を湾曲すんじゃねえ」
「どうかなぁ」

ニヤニヤと顔を擦りよせてくるのはまるで猫だ。言うことを聞かない化け猫を引き剥がそうと周囲を見回すと、廊下を通る長男の姿があった。助けを求めるのは癪ではあるが、藁にもすがる思いとはこのことだ。思いきって名前を呼べば、遊矢が気の抜ける返事をした。背中に黒い物体を背負って。

「どうかした? イチャイチャするならドア閉めてほしいんだけど」
「これのどこがイチャイチャなんだよ!」
「全体的に」
「さすが遊矢。わかってるね」
「うるせえぞお前ら!」
「遅いんだから近所迷惑とユートのことを考えろよ」

怒鳴り散らすユーゴを物ともせずに遊矢は身じろぎをしたユートを背負い直す。末っ子のことになると相当うるさい遊矢である。近所迷惑なんてのはただの理由付けで、ユートが起きることを危惧しての注意なのだ。細くなる赤い目を見ているだけで嫌でもわかる。

「ごめんね遊矢。僕たちのことは気にしなくていいから、ごゆっくり」
「おい。俺の布団に入り込むんじゃねえよ」

流れるように布団へと忍び込むユーリを睨み付けるが、クスクスと笑うだけである。遊矢なんて入り口から電気を消そうとしているし、どう考えてもグルとしか思えない嫌がらせである。
八つ当たりをこめて空のデッキケースをドア目掛けて投げつけてやったが、ドアによって阻まれてしまった。電気はちゃっかり消して。

「くっそ遊矢の野郎、覚えてろよ」
「君が先に忘れそうだよね」
「うるせえ!」

腰に伸びてきた怪しい手によって布団へと引きずり込まれながらも、言葉はせめてもの抵抗を示す。ユーリだけではなく、布団にまで取りつかれてかなり熱い。今日一日ずっと人型カイロをつけていたのだ、体温が元々高いユーゴにとっては我慢大会状態だったのだから。

「お前、どこまでが嘘で本当なんだよ」

抱きつく力は緩まないくせに、返事はない。

「...ユーリ?」

首だけで振り返ると、そこには小さく寝息をたてるユーリの姿があった。好き放題暴れまわって、勝手に寝るとはどこまでも自由な兄である。今日も一日振り回されたことに飽きれ、それでも付き合う自分に呆れてため息をつくしかない。
もう眠ろう、と目を瞑むると12時を知らせる電子時計の音と。

「ユーゴ、好きだよ......」

耳へと直接囁かれたあどけない告白に、布団を深く被るしか眠る方法は思い付かなかった。

+END

++++
ち、遅刻じゃねーし(震え声)

16.4.2



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