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ガイスト・ガール - 34



※34〜36期末試験編
 公式設定(アニメ・コミック)と異なります。
 公式設定重視の方はスルーでも構いません。



期末の筆記試験、すべての普通科目のテストは終えた。
クラス最下層の上鳴や芦戸も、八百万に飛びついてありがとうありがとうと騒いだあたり、好感触だったのだろう。


そして最後に残った演習試験。会場へ向かうバスの駐車場に集まったA組の生徒達、その前にずらりと並ぶのはプロヒーローでもある教師陣。

「先生多いな……?」

耳郎が小さく呟いたように、一見しても八人の先生達が揃っている。
B組から横流しされた情報では、入試のようなロボット相手の実践演習だと聞いたが、それにしては割く人員が多すぎるような。

「諸君なら事前に情報仕入れて、何するか薄々わかってるとは思うが……」
「入試みてぇなロボ無双だろ!!」
「花火!カレー!肝試――」

「――残念!!諸事情あって、今回から内容を変更しちゃうのさ!」

筆記試験をパスしてテンション高く答えた上鳴と芦戸だったが、相澤の捕縛武器からひょこっと飛び出してきた根津校長の言葉でピシッと動きを止めた。
対人戦闘において個性の調節が難しい二人が危惧したように、今回の試験内容はロボ無双ではなく教師との戦闘という実践的内容になったそうだ。

「チームの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度……諸々を踏まえて、独断で組ませてもらったから。発表してくぞ」

*  *

「よろしく頼むぞ!霊現くん、尾白くん!」
「おー、よろしく」
「よろしくね〜」

試験と聞いて、ドのつく真面目な飯田が気合を入れていないはずもない。
バスの対面する席に座ったこの三人で、今は運転席にいる彼と相対して試験をクリアしなければ、林間合宿に行けないのである。

相手は掘削ヒーロー・パワーローダー。個性の鉄爪で地中を掘り進むことができ、土砂災害時の活躍はもちろん、どこにでも入り込める移動能力は実用的だと言える。

相澤の独断でチームを組んだというが、この三人の共通点は何なのだろう――幽姫はすぐには判断がつかなかった。
少なくとも、爆豪や轟のような特攻可能な個性を持つ者がいないので、純粋な戦闘になるとやや苦戦しそうだというくらいのものだ。あと、普段あまり話さない相手同士なので、最低限の意思疎通を目指す必要はありそうだとか。

やがて演習場の一つに到着した。まるで工事現場のような、いくつかの重機が放置してあるだだっ広い岩石のフィールド。
黄色と黒のフェンスから中に入り、パワーローダーから試験の概要を説明された三人はそれぞれ気を引き締める。戦闘からのハンドカフスによる拘束か、またはゲートから一人でも脱出できれば合格。
三人チームの利点は、ゲートからの脱出可能性が少々上がりそうなところだろうか。
制限時間は、三十分。

『――皆、位置についたね』

スピーカーからはリカバリーガールの声が流れてきた。普段実況担当のように扱われるプレゼント・マイクも、今回は耳郎・口田チームの相手をしなければならないからか。

『それじゃあ今から、雄英高一年、期末テストを始めるよ!レディイイ――ゴオ!!』


合図と同時に、パワーローダーの姿が消えた。


一瞬虚をつかれて動きを止めた三人だったが、足元からの小さな地響きに気づき、ハッとしてその場から三方に飛び出した。
飯田のエンジンの音、幽姫がゴローちゃんを呼ぶ声、そして尾白が尻尾で地面を叩いた次の瞬間――ドオオッと轟く音と共に、今まで三人のいた地面に突如大穴が空いた。

「えっマジ……!?」
「うん、さすがの回避速度――まァ、いつまで避けられるかね……くけけ……」

大穴からパワーローダーの笑う声がして、またボコリと土を抉る音がして彼の姿が見えなくなった。
掘削ヒーローは早々に地中に潜り、三人に攻撃を仕掛けてきたのだ。

「おい今の、避けてなきゃ普通にヤバかったんじゃ」

尾白が顔をしかめて呟き、飯田は何度も深く頷いた。

「なるほど、教師陣も本気ということだな……これはますます実践的だ!」
「でも結構きつそうだね……ハンドカフスで狙うなら、相手が見えなきゃ――またッ!」

幽姫は思わず声をあげた。また、地響きがすぐ真下で起きたのに気づいたからだ。
飛び退いた直後、先ほどと同様に、幽姫のいた場所には深い穴。

「呑気に話し合う余裕ないよ!」

余裕ぶったパワーローダーの声。着地し、振り返ったすぐそこに暗い穴が迫っているのに気づいて目を瞠る。

「霊現くん!」
「きゃあ!ゴローちゃんありがと……!」

飯田に焦って名前を呼ばれたと同時に、幽姫の足が地面から離れてポンと空中に浮き上がった。近づくパワーローダーに気づかなかった幽姫を、ゴローちゃんが独断で浮かせてくれた。
すぐ下を猛スピードで地面を抉りながら過ぎていったパワーローダーはそれこそ掘削用重機のようで、ぶつかったら交通事故だとすら思われて頬が引きつる。

「大丈夫かー!?」
「うん――って、尾白くん後ろ!」

心配の声掛けに視線を向けると、幽姫を見上げる尾白のすぐ後ろに忍び寄る暗い穴。幽姫の忠告で反射的にその場を離れた尾白の咄嗟の判断は正しかった、おかげで事故は起きていない。

「二人とも!先生は姿が見えない!警戒を怠るな!」
『飯田(くん)後ろ――!!』
「おおおおっ!?」

その二人の忠告で、飯田も何とか事故を免れた。パワーローダーがやるじゃないのと笑って、地中に消えた。




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