案 | ナノ





今はまだ言えない

(だけどいつか伝えたい)


▽愛の集積
人間を愛していると豪語する俺の級友とその級友を愛していると主張する俺。
俺の愛はあくまで友愛であり、情愛ではないことを併せて主張しておきたい。

大粒の水滴がどんよりと濁った曇天から降り注ぐ、月のない夜。
池袋にあるとある大通りを逸れて脇道に入った奥の路地。
不法投棄と思わしきゴミ袋に半分埋もれるように、転がっていた。

元は黒く統一された服装は薄汚く、色濃く滲んでいた。
冬ならば暖かそうなファーも、夏となれば暑苦しいものだ。
柔らかな毛はごわごわと、液体に塗れて固まっていた。
何より印象的だったのは、鈍い光を放つ銀のナイフだ。

「いーざーやーくーん」
「ちょ、やめてよそれ、シズちゃんみたいで」

吐き気がする。と言い捨てるだけの余力はあるらしい。
(自称)素敵で無敵な情報屋さんの天敵は、俺の友人でもあった。

「今ならぷっつり潰されるかもしれないな」
「うっわ……ありそうで、なんかやだなー」
「まぁ、潰されなくとも死にかけているが」
「それ、思ってても言わないでくれるかな」

今更、俺とお前は遠慮をしあうような仲でもないだろう。
しかし先人は親しき仲にも礼儀ありとも言ったらしい。

「……死に際して、欲しいものはあるか?」
「んー? 珍しいこと言うじゃん」

そうだね……。と思案に耽る級友を見下ろして待つ。
俺の時間は有り余っていた。時間がないのは俺ではない。

「──携帯」

当初は鼻につく悪臭がとうとう馴染もうとしていた。
俺は瞬きを一つして、ゆっくりとしゃがみこんだ。
重くなったコートを漁って、目当ての携帯を探り出した。

この携帯に記録されている中のデータは知らない。
多分、かき集められた人間の情報が入っているはずだ。

「俺は人間が好きだ、愛してる」
「俺はお前が好きだ、愛してる」
「だから俺は人を知りたい、俺はまだ知り続けたい。愛している、だからこそ知らなければならないんだ」
「そうか、わかった」

愛している。だからこそ知らせなければならない。

「俺は折原臨也。俺は人間が好きだ、愛してる」

俺は立ち上がって、駅に向かって歩き始めた。


追記
2013/01/21 16:16


▽The whereabouts of the flying precious stone in the sky
レプリカジェイド

名前:ジェダイトJadeite(古代イスパニア語で『空飛ぶ宝石』)
愛称:ジェイドJade(ただし呼ぶのはディストだけ)
年齢:(外見)33歳
   (実質)49歳←35歳で処刑+14年前に造られた
身長:被験者と同じ
体重:被験者と同じ
階級:譜術槍士(ふじゅつそうし?)
二つ名:死閃光のジェダイトJadeite the Death Flash
通り名:神託の盾の死霊使い[オラクルのネクロマンサー]Oracul's Necromancer
地位:神託の盾騎士団第二師団副団長兼六神将補佐
容姿:被験者とほぼ同じ。髪の色だけ金。後に短くなる。
正体:中身は改心した常識人ジェイド(いわゆる二週目)。前世では不敬やら軍規違反やら数え切れないほどの罪状でマルクトにて処刑された。所謂原作ジェイド厳しめ。
親類罪でネフリーや養父母たちが処刑されたとき、遅蒔きながら己の過ちを悟って悔いる。時すでに遅し。そのまま斬首されてキムラスカで晒される。胴体は魔物の餌にでもなったと思われる。ローレライに拾われて二週目に放り込まれる。当然のように記憶がある。

感情の起伏が非常に穏やか。むしろ平坦かもしれない。
性格は現在の被験者ジェイドをちょーっとだけ丸くして冷酷さをほんの少し抜いたような感じ。
優しくなったのはいいけどその分ツンツンするようになった。可愛くないほうのジェイドより可愛くないレプリカジェイド(ピオニー談)。
嫌みったらしいところまでは変わらなかった。ただし嫌みは嫌いな人間にしか言わない(主にアッシュやPT)。一の嫌みに十以上の嫌みを返す。

相変わらず確証なしに言おうとしない。
頭はいいが、決して優等生にはなれないだろう人間。
基本的に嘘をつくだけではなく、本当のことを言うとも限らない。
これといった信念は持たないようにしている。自分の生きたいように生きたい。

前世のことを反省してルークを護ってやりたいと思っている。
今はその根回しのため、密やかに裏方にて奮闘している。時が来たら決起する。
フォミクリー理論を確立したことを後悔するのは止めた。今は理論を役立てる方向で研究している。
幼かった自分は今でも殺したいほど憎い。しかし現在幼かった自分より憎いのは、他でもない被験者ジェイドだったりする。

レプリカルークの音素乖離による死をローレライから知らされていたため、フォミクリーの研究再開を決意する。
結論は死んだ人が生き返ることはないということ。個人的な生涯研究は生と死について。生とは何か、死とは何か。
今はレプリカの制作ではなく、フォミクリーを役立てる方向性で実験している。これが死を理解できないままの当人なりのけじめのつけかた。

レプリカ情報を抽出したときの被験者ジェイド(当時19歳)はすでに譜眼であったため、瞳の色が同じ上に譜術の質も落ちていない。
任務などの外出時はディストの作った特殊な眼鏡(譜眼制御装置でもある)で赤色を隠していて、薄い茶色の瞳をしているように見せている。

被験者ジェイド以上の戦闘力を持ち、何故か使えないはずの第七音譜術も使えるようになった。
音素振動数は被験者ジェイドと同じな完全同位体。ただし被験者が第七音譜術士でないため超振動発生の危険はない。
コンタミネーション現象を利用して槍を携帯しているのは相変わらず。わりと苦手だった接近戦も頑張ってそれなりにできるようになった。

被験者ジェイドを嫌みったらしく被験者と呼び、異常なほどに嫌悪している。もはや憎悪の領域に入っている。
愛称こそジェイドだが、今ではその名前に執着はない。ディストしか呼ばないし、元々そんな性格ではないし、事情が事情だし。
ディストに対して一定の優しさを示すようになった。他人がいないところでは、時にサフィールと呼ぶ(主に頼みごとをするとき)。

移動手段は主にスケートボード。譜術を応用することで空も飛べる。というか主に飛行用。時として戦闘時にも活用される。
ディストの椅子を見て何となく便利そうなので使用している。実際は普通に走ったりするほうが速い。ただし移動距離が伸びると変わってくる。


追記
2013/01/21 16:11


← | →