キスは甘い。なんて言うが、私の場合はそうとは限らない。
なにせ、私の彼氏である伊月俊は大のコーヒーゼリー好きだからだ。
「俊、またコーヒーゼリー食べたでしょ?」
深めのキスを終えて、一旦落ち着いてから言った。
バレた? と俊は言う。
「当たり前でしょ。苦いんだもん」
「そんなに苦いか?」
「そこまで苦くはないけど」
私はそう言って、まだ感触の残っている唇をさわりながら言った。
まだ生々しく感触が残っている。
「嫌いになった?」
キスは、と俊は不安そうな顔をして聞いてきた。だから私は、そんなことないよ、と言った。
すると俊は安心したかのように、そうか、と一言言った
「彩花の場合はスッゴく甘いよ」
「チョコの味した?」
先程まで食べていたチョコに視線を向ける。
ブラックではなく普通のミルクチョコレートである。
「まぁそれもそうだけど、
彩花の味がしたよ」
俊は恥ずかし気なくサラリと言った。
私はそっか、と素っ気なく応答してしまったが内心めちゃくちゃ恥ずかしがっていた。
「……もう一回して良いかな?」
返事をしようとしたら、止められた。
唇には柔らかい感触があり、そして、また少し苦かった。
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