かたいひと

ふぬぬ。と、心の中で唸りながら背伸びをする。あと数センチ。足がプルプルしているが、そんなの後ちょっとの辛抱なんだ。頑張れ、耐えろ自分。なんて考えながら目標の本の背表紙をタッチする。よし、後もう少し……。
「これが欲しいのか?」
横からスッと手が伸びてきた。私は、突然な事と、始めてなことに、カミカミでありがとうと言った。すると、彼はいやいや、と首を振った。いやいや、こんなことする男子、あんまり居ませんからね?
「結城君だよね? 本当、ありがとう。助かったよ」
「いや、当然のことをしたまでだ」
さらりと彼はそう言って、私に本を渡してくれた。あぁ、だから結城君はモテるのか。私はそう確信した。
「あ、そうだ。夏の大会頑張ってね。後何勝すれば甲子園なの?」
私の問いに丁寧に答える彼。そっか、頑張れ。と、言うと、ありがとう、と彼は少しお辞儀して言った。野球部ってなんでこうも礼儀正しいのだろうか。
「夏休み、短くなりそうだからな」
「応援の事? 大丈夫、皆暇だって言ってたし。っていうか、女子の大半は行きたがってるよ」
そう言うと、結城君は、皆野球が好きなんだな、と嬉しそうに言っていた。おい、そういう意味じゃないぞー。なんて内心でツッコむ。まぁ、行きたがっている=野球部員を見たい。という式が成り立つということを彼は知らないのだ。仕方あるまい。そういえば、この前、クラスの子が結城君に告白したって聞いたな……。(まぁ、フラれたって言ってたけど。)やっぱり結城君も人間だし、好きな子ぐらい居るだろう。だが、彼にそんな事を聞けるほど私たちの仲は良くないし、聞く度胸もない。だから、その質問は胸の中にしまい込む。
「そういえば、宮本は野球好きなのか?」
結城君はそう言って私の腕の中にある本を指さす。そこには、野球の恋物語の話を連想させられそうな題名かいてある本があった。私は、え、あ、うん、と言った。嘘ではないので、罪悪感は無かった。
「そうか、最近凄いな。野球ブームなのか?」
「うーん、どうなんだろう」
私と結城君はそんなやり取りをしていると、図書室の管理の先生に怒られたので追い出された。でも、結城君は嫌な顔せず、追い出されてしまったな、と笑っていた。私もそれにつられて笑った。
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