幸せ者の理論
「よっしゃこいおらぁぁぁぁぁ!!」
純の声がグラウンドに響く。
そんなほえる彼を私は仕事をしているため、見れない。
周りの野球部ではない彼女たちは、キャーキャーと騒いでいる。
「彩花、こっちもお願いできるかしら?」
「うん!」
貴子の声で、我に返る。
ダメダメ、わがまま言っちゃダメ!
マネージャーがやらなくて誰がやるの!
*
「おう、彩花」
「あ、純だ」
「なんだその薄い反応」
純はそう言って、哲君と別れを告げる。
あぁ、悪いことしちゃったな。
「ゴメンね、純」
「あぁ? 俺に気使ってんじゃねーよ」
純はそう言って、私の髪をぐしゃっと触る。
あぁー。髪が崩れたな。
「ゴメンゴメン。
自主練するの? 私も手伝おうか」
「お前は帰ってろ」
「え、私、邪魔?」
「違ぇよ。変な被害妄想してんじゃねーよ。
もう暗いから帰れっつってんの。
俺はそのー、他の奴らみたいに家まで送る事できねぇからよ」
純はそう言って、そっぽを向いてしまった。
あぁ、そっか。純は私の彼氏なんだ。
そう思うと、ニヤケがとまらなくなってしまった。ので、下を向く。
「ふぅ。じゃあ、また明日ね」
「おう、また明日な」
純と私はそう言って、背を向けて歩き出した。
あぁー、私って幸せだな!
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