挑戦者の道

「南朋? 明日は稲実との戦いでしょ?
 早く帰らないと……」
南朋とは高校まで、ずっと一緒である。
だから、腐れ縁っていうの? 南朋と私はそんな関係であった。


「うん、すぐ帰るよ。
 彩花は先に帰っててよ」

「ううん、南朋が帰らないなら私も帰らない」

「そっか」
南朋はそう言うと、稲実の試合を見直した。
この試合に勝てば、皆に自信がつくであろう。
南朋はそう言ってたっけなぁ。


「……うん、終わった。
 彩花、送って行くよ」

「フフ、南朋と私の家隣同士じゃん」

「送ったことには変わらないだろ」
南朋は笑った。
私は南朋の後ろに行って、押そうと思ったが大丈夫。と、
断られた。


「今日はゆっくり帰らない?」
南朋はいう。


「そうだね、明日の事も話したいし」

「違う違う、そういうんじゃなくて……ちょっとね」

「? 珍し―い。南朋が野球以外を話すなんて」

「彩花?」

「冗談だよ、南朋。
 で、どうしたの?」
私は隣にいる南朋に言った。
けれども、南朋は腕を動かしているだけで口は開かない。
いつもの南朋とは少し違かった。

「明日、稲実に勝ったら付き合ってくれないかな」
南朋はいつも通りの笑顔で言う。
私はどうして良いか分からず、固まってしまった。

「でも付き合ったら、彩花にはたくさん迷惑かけるんだけどね……」
南朋は自分の足を見て言う。
私はその時、どう声をかけたら良いのか
どんな反応が正解なのか分からずにいた。
けれども、私は一言言った。

「私も大好きです」
その時の南朋の顔は先ほどの顔よりも
笑っていた。

(でも稲実に勝たないと付き合えないからね)
(……恥ずかしい)
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