失恋サイン

長い長い髪の毛を私は短くした。
美容院の方に、勿体無いだのなんだのと言われたが私は切った。自分でも雰囲気が変わったなと思った。短い髪の毛はとても手入れが簡単でこれからもコレがいいなとか考えていた。

「切ったんだ」
だが、彼の一言によりわたしの心は一変した。友達からは似合ってるだの、可愛いだのとありきたりな使い古された言葉を並べられ、私は、ありがとう、と笑った。

「うん、バッサリとね」
「ふーん」
彼だけは、そう、彼だけは似合っていると口にはしなかった。私は何も問いかけずに彼と他愛のない会話を繰り広げた。

「あ、そーいや、髪切るのって失恋したからか?」
なわけ無いじゃーん、と笑って誤魔化す。誰だって失恋の一つや二つ人生の中である。それが今来ただけのことだ。
なのにどうしてこんなにも苦しいのだろうか。自問自答をしなくても答えは分かっていた。それだけ彼のことを好きだったからだ。

「そうか?」
「そうだよ、最も私に好きな人はいないしね!」
「だな!」
彼は笑った。私の気も知らずに。
その馬鹿なところとかどうにかして欲しい。私の心をかき乱さないで欲しい。

「でも俺は長い髪の毛の方がイイと思うけどな。彩花って感じがするし!」
「へー、そう?」
「おう!」
彼は馬鹿正直な人だ。だから皆に好かれるのだ。そんな彼に私は少しずつまた溺れていく。
| #novel_menu# |
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -