正解なんてない

あっちに進めばいい方向へ進むとか、そんなの知るわけがない。だから人類は間違いをおかしたりしてしまうのだ。
それを知ったのは大人になってからで、俺は凄く驚いた。
ボスも師匠も御幸一也も俺にアドバイスをくれたのは、全部未来がわかっている上でのことだと思っていたのだ。

そんな分かりきったことをまだ知らずにいた頃の話だ。


「栄純は東京に行った方が良いよ」
その日は風があまり吹かなかった。だから、前にいる奴の長い髪の毛も綺麗に舞うことはなかった。
そいつは、何もかも分かりきっているかのように俺にアドバイスをくれた。
そいつとは、幼なじみではないが小学校からの付き合いだ。
それに、恋人同士である。

「そうか?」
「うん、勿体ないよ。行ってきな?」
「でもそしたら、もう彩花とは長くいられねぇよ?」
「そんなの承知の上に決まってんじゃん」
彩花はさも当たり前のように言った。その時の俺は安心して、青道へ入学をした。
心地よい背中の押し方。
彼女独特の言葉に俺は甘えた。

彼女とは別れたくなかったから、電話したりメールしたりと先輩に隠れてやっていた。こればかりは気づかれたくなかった。
幸い、もっち先輩も若菜に夢中のようで気づかなかった。

「んじゃ、お休み」
「うん、お休み。頑張ってね」
「おう!」
その日も電話して、部屋に戻った。
遠距離恋愛は嫌だけど、電話してるから大丈夫だよなーとか思っていた。
けど、スピッツ先輩曰く、それじゃぁ、別れるぞ、とバサリと言われてしまった。

「スピッツ先輩ー、どうしたら良いんスかぁ!? スピッツ先輩しか言ってないんスよー!!」
「スピッツスピッツうるせぇだしゃぁぁぁぉぁあ!!」
「先輩も煩いっすよ」
そう、俺はスピッツ先輩だけには相談していたのだ。ほら、俺の周りの先輩ってからかう人ばっかだし。


「まぁ。正解はねぇからな。とにかく、デートだ!!」
「で、でで、デートっすか!?」
その時は、冷や汗が止まらなかったけれども、今では、大切な思い出だ。

なぁ、彩花、その日のこと覚えてるか?
楽しかったよな。たくさん遊んだ。
でも、もうおまえは帰ってこないんだよな。
野球ばっかやっててごめん。お前のことよく分かってなかった。
俺も不器用なやつだったよな。

今では、良い思い出だよ。
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