先ほど御幸にも言われたが、
私の……か、彼氏は鈍感だ。
しかも、イライラするほどの。

私は、御幸に言われたその『鈍感』と言う言葉を否定してしまったが、
そんなの毎日のように思ってる。

哲以外の男子に抱き付いても、哲は何も言わないし、
哲以外の子に好きって言っても、いつも通りだし……。


「好きなのは、私だけ……なのかな」
一人になった部屋で私は呟いた。
先ほどまで練習の計画を練っていた私たちだが、
哲が飲み物を買ってくると言い出してそのまま帰ってきていない。
まぁ、でもそんな人を好きになってしまった私も私なんだけどね。



「彩花」
扉が開き、そう聞こえた。


「あ、哲、お帰り。
 ごめんね、練習で疲れてるのに……」

「いや、このぐらいどうってことない。
 それよりこれで良かったか?」
哲は私がいつも飲んでいるジュースを渡してくれた。


「うん! ありがと、哲」
こういうのをやられてしまうから、
嫌いになれないんだよなぁ……。
本当、哲はよく人を見ているよ。


「そういえば、大学はどうなんだ?」

「うん、まぁまぁかな?
 充実してる……と、思う」
哲が居ないから、変な感じなんだよねー。なんて冗談交じりで
私は言った。
たぶん、哲は鈍感だから何も感じないんだろうなー。とか思いながら。


「俺も、彩花が居ないと変な感じだ」
哲は珍しく、少し顔を赤らめて下をうつむきながら言った。

え?
私は内心、驚いていた。
だって、あの哲が……あの鈍感な哲が……。


「哲? 顔真っ赤」

「む、彩花も下を向いててくれ」
哲は恥ずかしそうにそういうと、私の頭を下に下げた。
大きな手が私の頭に乗っかる。


「……良かった。
 哲さ、いっつも私が男子と居ても何も言わないから、
 冷めちゃったかと思ったよ」

「そんなことは無い。
 でも、その男子と言うのはチームメイトだから、
 ちょっと安心してるところもあったかもしれない」
哲は顔が少し冷めて、いつものように言った。


「そうなの?
 でも、それだけチームメイトを信用してるってことだよね」

「あぁ」
哲は嬉しそうに言った。
その後、私たちは真剣に練習メニューを組み立てた。


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