「哲也君、帰ろっか」
いつも通り、私たちは自主練をして、終えた。
今回は1年生も参加している。
いつもの場所では足りなくなった。


「凄いよね、今年のチームは強いよ!」
私は哲に言った。

「そうですね、そう思います」
哲も同意した。


「そういえば、こうやって帰るのも……何年経ったっけ?」

「1年弱ですね。
 もうそんなになりますか……」

「早いよねぇ。
 昨日が入学式って感じだよ」

「? 結構身長伸びましたけど?」

「ははっ、違う違う。
 哲也君は大きくなったよ、なんか……カッコよくなったよ」
私は言ってしまった。
あれ……あぁ!!

「ち、違うよ!? 変な意味じゃなくて、あの……そのさ。
 えっと……あ、責任感が強くなったっていうか……なんていうか。
 その……」
私は良い言い訳を探した。
哲は横で、ボケーとしていた。何も感じていないらしい。


「そう見えてて良かったです」

「あ、う、うん」
哲が天然で良かったと思った、私であった。



「あ、じゃあまた明日ね」
私は言うと、哲は手を振った。


「あ、やっぱり待ってください」
哲はそう言った。
私は振り返れば、哲は私の腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。

後ろには、車の通る音が聞えた。


「危な……。
 あ、大丈夫ですか? 彩花さん」
私は顔をあげると、哲の顔があった。
一瞬、胸がドキッと鳴ったような気がした。
私はどうすれば良いのか分からなくて、もう一回顔を下げた。


「彩花さん?
 もう大丈夫です。車いなくなりましたよ?」

「あ、う、うん。
 ありがと」
私はそう言いながら、哲から離れた。


「あ、さっきはありがとうね。
 じゃ、じゃあ、また明日」

「はい、また明日」
今度こそ、私は哲と別れた。


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