「あ、貴子ちゃん。
これをあそこに皆で置いといてくれるかな?」
「はいっ」
貴子ちゃんはそういうと、
新一年生のマネージャーを引き連れて荷物を置きに行ってくれた。
うん、マネージャーの心配はまったく問題ないようだ。
「あ、彩花さん」
「哲也君。どうしたの?」
こうして二人で喋るのは帰るときなので、
少し変な感じだ。
というより、練習着姿の哲をじっくり見るのはこれが初めてであった。
「あ、あの……。
今日も一緒に帰りませんか?」
「え、うん。
今日も私練習に付き合おうと思ってたんだけど……。
あ、今日特別メニューとか?」
「いえ、今日も昨日と同じです。
じゃあ、今日も宜しくお願いします」
「うん、こちらこそ。
夏まであと少しだしね!」
「はい」
哲はペコリと頭を下げると、
守備位置に戻ってしまった。
水分補給をしなくて良かったのだろうか……。
貴重な休憩時間を私のせいで無駄にしてしまったなぁと、
私はその時思っていた。
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